トーリック幾何学に関して次の結果を得た. 1. トーリック log del Pezzo 曲面は,対応する扇が特異な 2 次元多面錐を 2 個以上もつならば(すなわち,特異点を 2 個以上もつならば),非特異な 2 次元多面錐が 3 個以下である(すなわち,もとのトーリック log del Pezzo 曲面のピカール数が (特異点の個数)+1 以下である)ことを示した.更に,各 n≧2 に対し,扇が特異な 2 次元多面錐を n 個もち,非特異な 2 次元多面錐を 3 個もつようなトーリック log del Pezzo 曲面の具体例も構成した.昨年度,任意のトーリック log del Pezzo 曲面の扇は,非特異な 2 次元多面錐が連続して並ぶ(したがって,特異な 2 次元多面錐も連続して並ぶ)ことを示しているが,証明にはこのことを用いる. 2. 特異なトーリック log del Pezzo 曲面は,別のトーリック log del Pezzo 曲面の非特異なトーラス不動点を中心としたブローアップとして得られないならば,対応する扇の非特異な 2 次元多面錐が 2 個以下であることを示した. 3. 8 次元の非特異トーリック Fano 多様体で第 2 Chern 指標が正であるものは射影空間に限ることを示した.実際,del Pezzo variety とよばれる多様体を除く,ピカール数 2 以上のすべての 8 次元非特異トーリック Fano 多様体に対し,第 2 Chern 指標との交点数を 0 以下にするトーラス不変な部分曲面としてピカール数 2 のものがとれることを示した.これらは,次元が 7 以下の場合と同様の結果である(佐藤拓氏(福岡大学),佐野友二氏(福岡大学)との共同研究).
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