令和元年度は、アラム商人がアッシリア帝国内において交易活動を独占したとする仮説の妥当性を検証するために、アッシリアの王碑文・王室書簡・行政経済文書を渉猟し、交易に関するデータを収集・分析した。その結果、長年に渡って受け入れられてきた仮説が史料に基づかない恣意的な言説にすぎないことが判明した。より正確に言えば、報告者は、ある役人がアッシリア王に宛てた手紙(SAA 18, No.192)の内容から、実際にはアラム商人だけではなく、数多くの異民族の商人たちがアッシリア王の保護を受けて交易活動に従事していた事実を明らかにした。
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