令和2年度は、アッシリア軍兵士として採用された外国人にかんするデータを、王碑文を主体とする史料から収集し、分析した。その結果、アラム系の人々だけではなく、民族を異にする様々な人々が軍隊に採用されていた事実が判明した。これによって、アッシリア軍における「アラム化」と称される現象は過度に強調された言説であることが明らかになった。
報告者は3年間に渡って学振PDの研究課題「新アッシリア時代におけるアッシリアのアラム化」に取り組み、現存する史料を網羅的に調査したが、アラム化にかんして得られたデータは想定したよりもずっと少なかった。そのため、当初予定していた、研究成果を単行本として出版するというプランを変更し、現在出版を計画している、昨年末にドイツで出版した研究書(Die Deportationspraxis in neuassyrischer Zeit)の英語改訂版に一つの章として組み込むことに決めた。この英語改訂版の出版にかんしてはUgarit-Verlag(ウガリト出版社)の代表であるThomas Kaemmerer教授(タルトゥ大学)から全面的にサポートするという旨の返答をすでに得ている。
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