研究実績の概要 |
本研究は、ショウジョウバエの性行動をモデルとして、感覚情報を統合し行動を決定する脳高次中枢神経機構を明らかにする目的で行っている。昨年度までの研究で、私は神経活動依存的に発現する即初期遺伝子を利用して、昆虫で活動依存的に神経細胞をラベルする手法を開発した(Takayanagi-Kiya and Kiya, PNAS,2019)。また、この手法を用いて、雄の脳高次中枢で性行動中に活動する神経としてaSP2 神経群を新たに同定し、その活動が求愛行動の持続と迅速な交尾遂行に必要であることを見いだした。現在は、aSP2 神経が求愛行動中にどのように活動し、性行動の制御において具体的に何の役割を担っているかを明らかにすることで、高次中枢における行動制御機構の一端を解明することを目指している。 今年度中の研究で、私はaSP2神経の活動をリアルタイムで検出し解析するカルシウムイメージングを行う為の準備を行った。具体的には、カルシウムインジケーターをaSP2神経特異的に発現させる為のトランスジェニックショウジョウバエ系統をSplit-GAL4システムを用いて作出し、その有用性を検討した。また、所属研究室でイメージングを行うための顕微鏡セットアップを構築した。今後、雄に感覚刺激(雌の性フェロモン刺激)を与えた際のaSP2 神経の反応を解析する予定である。その際、aSP2神経が多種の感覚情報を統合しているのではないかという仮説を検証するため、嗅覚・味覚の刺激を別個に与えた場合と、同時に与えた場合で神経活動がどのように変化するかを詳細に解析する。さらに、aSP2神経が、性行動を直接制御するP1神経の活動に影響するかを調べる。
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