研究課題/領域番号 |
18J00122
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
羽田 政司 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究セ ンター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 胚対外組織 / 体細胞核移植法 / 一細胞遺伝子発現解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、精子のエピゲノム情報が、精子核凝集の過程で次世代胚のためにプログラムされているということを示すことである。このために、未熟な精子細胞である円形精子細胞を顕微授精させ、未熟なエピゲノム情報のプログラムが及ぼす次世代胚発生への影響を解析する予定であった。しかし、2018年度の結果から、円形精子細胞の顕微授精による胚の発生効率は、自然受精のものと大きな差がないことが分かり、円形精子細胞由来胚の低発生効率を指標とした解析が困難であると判断した。そこで本研究課題の目的である精子エピゲノム情報、すなわち正常な配偶子のエピゲノム情報が次世代胚発生に重要であることを示すため、異常なエピゲノム情報に起因する胚発生異常モデルとして体細胞核移植胚の解析を行うこととした。体細胞核移植法とは分化した体細胞の核を未受精卵に導入することで、完全な個体を形成させる技術である。体細胞核移植法の大きな問題点は個体までの発生効率が低い点であり(マウスでは1-5%程度)、核移植胚では抑制的なエピゲノム情報であるH3K9me3の蓄積やH3K27me3の異所な消失により、数々の胚発生異常を呈することが報告されている。特に胎盤の形成異常は現状どのような方法を駆使しても改善させることができていない。そこでまずは核移植胚を用いた遺伝子発現解析を行うことにより、胎盤形成異常の原因となる遺伝子領域を同定することを目的とした。 2019年度は、1細胞スケールでの遺伝子発現解析法 (scRNAseq, single cell RNA-seq) を用いた着床後胚解析の準備を行った。培養細胞を用いたscRNAseqの実験系は既に2018年度にセットアップできていたが、これと概ね同じ方法でマウス胎生6.5日胚の胎盤細胞のデータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では着床後の胎盤に焦点を当てているため、より効率良く着床後の核移植胚の胎盤を回収する必要がある。そこで最近論文で報告された方法である、Xist遺伝子の欠損とH3K9me3脱メチル化酵素であるKdm4dの過剰発現を併用する方法を用いる。このためにXist遺伝子の欠損マウスが必要であるが、このマウスを効率的に繁殖させることができず、解析に必要な十分量を確保することができなかったために遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は十分量のノックアウトマウスを確保することができず、計画に多少の遅延が生じた。このマウスは現在繁殖中であるため、次年度はまず野生型の核移植胚の胎生6.5日目の胎盤を用いたscRNAseq解析に着手する。これにより、胎盤系列の細胞においてどのような種類の細胞が核移植胚の胎盤で影響を受けているかを解析する。
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