研究課題/領域番号 |
18J00151
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関 真一朗 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | 多重ゼータ値 / 有限多重ゼータ値 |
研究実績の概要 |
今年度は(有限)多重ゼータ値の新しい証明手法である「動的証明」の手法およびt進対称多重ゼータ値を主たる研究テーマとして研究を行った。 (有限)多重ゼータ値の双対関係式ならびに大野型関係式の新しい証明手法を昨年度末に山本修司氏との共同研究で発見していた。今年度はその手法の整理および昨年度の成果に関する論文の執筆、研究集会での成果発表等を行った。執筆した二つの論文を投稿し、その内一つは掲載許可された (Int. J. of Number Theory)。新手法は(有限)多重ゼータ値の適切な連結子・連結和をみつけることによって様々な関係式が「動的」に証明されるというもので、それを「動的証明」と名付けた。巡回和公式や複シャッフル関係式を始めとする関係式族達が動的証明によって再解釈されることを発見した。副産物として和公式のA2類似が得られている。 A有限多重ゼータ値と対称多重ゼータ値という多重ゼータ値から派生した研究対象があり、これら二つの対象が密接に関係することが金子-Zagierにより予想されている。昨年度までにA有限多重ゼータ値を拡張したpp進有限多重ゼータ値に関する研究を行っていたが、今年度はそれに対応すると考えられる対称多重ゼータ値を拡張したt進対称多重ゼータ値の基礎研究に着手した。第26回整数論サマースクールでこの研究について発表しそれに基づいて小野雅隆氏と山本修司氏との共同研究が開始された。この研究は概ね完了しt進対称多重ゼータ値の複シャッフル関係式を証明することに成功した。 関連研究として村原英樹氏と小野塚友一氏と共同でBowman-Bradleyの関係式のA2類似を証明し論文を執筆して投稿した。昨年度までに成果を得ていたpp進有限多重ゼータ値(およびそのポリログ化)の双対関係式の論文を東北ジャーナルから、素数の無限性等の新証明手法に関する論文をNNTD誌から出版した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A_2でBowman-Bradley型関係式や和公式を証明することに成功し、t進対称多重ゼータ値についても基本となる複シャッフル関係式を証明することに成功した。古典的な有限多重ゼータ値の関係式族の研究については関連研究者が目覚ましい成果を上げているため申請者の出る幕は少なかったものの、このように拡張された対象については順調に研究が進展している。 当初予期していなかった「動的証明」と呼んでいる新証明手法が発見されたことによりそれに関する研究は非常に進んだが当初予定していた関係式族間の関係性についての研究は進んでいない。しかしそれは二年目以降の研究として取り組めば良いもにであるし、動的証明の考え方も有効に働くと期待している。
|
今後の研究の推進方策 |
pp進多重ゼータ値およびt進対称多重ゼータ値に関しては順調に研究がスタートしており、今後取り組むべき課題は多数ある状況である。例えば既存の有限多重ゼータ値・対称多重ゼータ値を一つずつ拡張するという研究が大事であり、地道に取り組んでいく。また、双対公式導出問題をはじめとする関係式族間の関係性の研究や環Aの整数論的性質の解明に係る研究に着手する。
|