「家庭内の年齢の異質性を加味した感染性」と「環境を介した感染性」の推定について前年度に一定の成果を得ていたため、本年度はこの2項目についてさらなる発展と進捗とを目指した.1つめの項目については,前年度に取得したノロウイルスを原因とすることの蓋然性が高い急性胃腸炎の家庭内感染データを用い,層別化された年齢グループごとの二次感染リスクの推定に加えて、感染動態を支配するパラメータである年齢層別の伝播率と感染期間とを推定した。これまでに得られている症候群ベースのデータについて、症状の持続期間を含めて症例定義を見直してデータクリーニングを施し、データ適合を実施した。得られた結果から、低年齢層が家庭内における感染動態に大きく貢献していることが再び示された。当結果については現在論文を執筆中である.後者の課題については,2004年のオランダにおける集団発生事例データを用い、環境リザーバからの伝播率を推定した結果をもとに論文原稿を作成して投稿した.現在、個体から排出されるウイルス量の動態を加味し、感染性の時系列変化を加えた修正原稿を再投稿し、査読下にある状況である。修正後の結果も大きくは変わらず、環境リザーバへのウイルスの蓄積が感染者数,感染期間,ウイルスの生存率および感染イベントの期間の影響を大きく受け、また感染動態に貢献している可能性が示された.本年度は特に「不顕性感染者の感染性」の推定に注力する予定であったが、明瞭な結果を得るには至らなかったため引き続き解析を実施する。
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