研究課題/領域番号 |
18J00197
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
福原 明雄 一橋大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | リバタリアニズム / 自由 |
研究実績の概要 |
平成30年度に公表された研究成果は、拙著に対する書評への応答論文一本と、IVRJ2018での報告一本の計2点である。これらは平成30年度以前に公表された研究に派生するもので、平成30年度の研究実施計画の実績そのものではないが、申請者のより大きなスパンでの研究プランの中では軸となるものの一部であり、本研究課題に密接に連続しているものである。 平成30年度は、研究実施計画の通り、自由主義の制度において必要である客観的条件、主に分配的な考慮の問題を検討した。具体的には主にベーシック・インカムにまつわる議論を扱った。ベーシック・インカムは様々な分野の研究者が、様々な関心のもとに、様々な理念を読み込んで議論を展開しているが、殊、英米的な分析哲学・政治理論においては、多くの論者が(平等というよりは)自由を保障するための分配政策として論じるということが分かった。尤も、そこでの自由の意味は多種多様であり、「自由」に何を期待するのかによって議論の性質・評価が大きく変わってくることも分かった。 このように理解を進めていく中で、左派リバタリアニズムとベーシック・インカムを積極的に結びつけて論じるKarl Widerquistの議論に一定の面白みと意義を見出した。彼は自己所有権の実質的な保障として、あらゆる望まない選択を迫られたときにNoといえるような選択肢の保障としてベーシック・インカムを捉える。このような発想は申請者が本課題の中心に据えている理論の発想と極めて近いと思われる。詳細の検討については次年度の課題となるが、この点の検討は本課題にとって十分な時間をかけるに値するものだと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、これまでの研究の総括や他の研究者からの反応に応える成果を発表し、また、その内容を国際学会で報告することができた。これは「研究の目的」に沿って、研究の成果を順調に発表することができたと言って良いだろう。また、平成30年度の計画の中心であった客観的な条件=分配の問題にも進展することができたので、本課題は順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、本研究課題の「研究目的」に沿って、書籍・論文の購読を進め、報告や論文などの形で、研究を進めていきたい。 但し、平成31年度はきっかけを掴んだ、ベーシック・インカムなどの分配の問題に加えて、主観的な条件としての自己著述者の内容充填にも取り組むことで、順々に研究を進めていきたい。
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