研究課題/領域番号 |
18J00287
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
外間 進悟 大阪大学, 蛋白質研究所, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | NVセンタ / 量子センサ / ナノダイヤモンド / 温度 / 蛍光イメージング / 金ナノロッド |
研究実績の概要 |
本課題の目的は温度がどのように生命現象と関係しているのかを明らかにすることにあり、そのために据えた具体的な問題は、「細胞内の温度分布、および、細胞内のどの部位・オルガネラが温度を感知する役割を担うのかを明らかにする」ことである。平成30年度は以下の5つの課題を達成した。①温度計測を可能にする光検出磁気共鳴顕微鏡(ODMR)顕微鏡に温度コントロールシステムを導入し、サンプルステージの温度を0.1℃の精密さで制御することに成功した。②蛍光性ナノダイヤモンド(FND)が外環境(3M NaCl、pH1-13の水溶液中、グリセロール中、ポリエチレンイミン分子の表面吸着、エタノール中)に影響を受けずに温度のみを精密に計測できるプローブであることを実験的に証明した。ポリマー型・タンパク質型・蛍光低分子型温度計と並び細胞計測に有用であり、頑強性に優れた温度計となることを示した。③細胞内に取り込ませたナノダイヤモンドにより、細胞内の絶対温度を計測する簡便な方法を確立した。④蛍光性ナノダイヤモンド 表面に金ナノロッドを吸着させることで、金ナノロッド(GNR)から発せられるナノスケールの発熱をFNDでモニタリングできるハイブリッド材料の創出に成功した。⑤FNDは粒子間でサイズ・形状が大きくばらつき、これがODMR信号にばらつきを生み正確な計測を妨げる。本研究では化学エッチングにより球形かつ均一な粒子系を有するFNDの調整に成功した。今後は開発したFND、FND-GNRハイブリッドを用いて細胞計測を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度は①光検出磁気共鳴顕微鏡への温度コントロールシステムの導入、②FNDの温度計測能が、塩強度、pH、粘性、他の分子との相互作用に影響されず、温度のみを正確に検出できることの実験的証明、③FNDの表面にGNRを結合し、GNRの発熱をFNDで検出するプローブの開発を主に行った。 ①に関して、顕微鏡にレンズヒーター、ステージヒーター、フードを取り付けサンプルの温度を熱電対で検出するシステムを構築、その結果、サンプルの温度を0.1℃の精密さでコントロールすることに成功した。②に関して、①で確立したシステムを利用することで、3M NaCl、pH1-13の水溶液中、グリセロール中、ポリエチレンイミン分子の表面吸着、エタノール中、いずれの条件であってもFNDの温度計測能は影響を受けないことを実験的に世界で初めて証明した。これら2つの結果に加え、細胞内に導入したFNDの絶対温度を計測するプロトコルを確立、これらの成果は Biophysics and Physicobiology誌に掲載されたことより、当初の計画以上の成果が得られたと考えている。 ③に関して、FNDとGNRを静電的に吸着させることによってFND-GNRを調整し、レーザー照射によりGNRがどの程度発熱するかを、FNDでモニタリングする実験を行った。その結果、10mWのレーザー照射で10℃程度の温度上昇が見られた。このような温度上昇はGNRを表面に有さないFNDからは確認されなかった。本研究によって得られた分子プローブは生体応用するにあたり十分な発熱能を有していた。総合し当初の計画以上の成果が得られたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、開発した蛍光性ナノダイヤモンド (FND)、および金ナノロッドとのハイブリッド(FND-GNR)を用いて細胞計測を進める予定である。まずは細胞内で産生される熱の可視化に関する研究に着手する。細胞は、生体内でエネルギーを消費し熱生産を行うことが知られている褐色脂肪細胞を用いる。本研究では、オルガネラ近傍の温度変化マップを作成することによって、細胞内の時空間的な温度分布のゆらぎを可視化する。エンドサイトーシスによって標的細胞に取り込まれたFNDーGNRに対して、外部から800nmの赤外光を照射することによって、プローブに熱を発生させ、エンドソームからの脱出を図る。その後、ミトコンドリア、核へのターゲティングを行う。これはHPG表面に存在するOH基をミトコンドリア移行シグナル、もしくは核移行シグナルで機能化することによって達成する。局在はミトコンドリア、核をそれぞれ別の蛍光試薬で染色し、共焦点顕微鏡を用い共局在を確認することによって行う。その後、細胞内の複数のミトコンドリア、及び核それぞれに対し近傍の温度が時空間的にどのように変化するのかをFNDの磁気共鳴信号から明らかにする。更に、細胞培養液中に存在するグルコース濃度を変化させる事や、ATP合成阻害剤を加える事により、細胞機能に関連する熱生産に関与する化学反応の同定を行う。同時に、本研究では、原田博士が開発した温度計測ポリマープローブ(Sakaguchi et al., Biotechnology, 2015)との比較実験を行うことで、既存のプローブとの差異、有用性についても評価を行う。
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