研究課題/領域番号 |
18J00322
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邊 賢人 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | エンタングルメント・エントロピー / ゲージ・重力対応 |
研究実績の概要 |
繰り込み群における有効自由度の単調減少性というのは物理学における重要な問題の一つであるが、近年、量子情報量の一つであるエンタングルメント・エントロピーを用いたアプローチが試みられている。 本年度、我々は、欠陥の入った共形場理論(Defect Conformal Field Theory, DCFT)においてエンタングルメント・エントロピーと自由エネルギーを用い、欠陥上の繰り込み群に対するそれらの指標の単調減少性について研究を行った。球形の部分系に対する共形変換を用いることにより、DCFTの真空でのエンタングルメント・エントロピーが非常に普遍的な形で得られることを示した。また、先行研究においてこのエンタングルメント・エントロピーは欠陥上の繰り込み群における単調減少性の指標であると予想されてきたが、我々はその予想に対する具体的な反例をいくつか与え、球面分配関数を用いた自由エネルギーの方がより良い指標となるという予想と場の理論とホログラフィックな模型における具体例を提示した。我々の予想は一般の時空や欠陥の次元に対する予想であり、いくつかの次元に限定されていた過去の予想を大きく拡張し、新たな研究の道筋を与えることが期待される。 一方、同研究において、量子情報理論でよく用いられる相対エントロピーという2つの状態の指標の満たす不等式から上の予想を導出するという方向でも研究を行った。しかし、欠陥に関する紫外発散の処理が課題として残り、証明の大枠を提示するに留まった。この方針での研究は次年度も継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、欠陥上の繰り込み群に対する有効自由度の単調減少性という問題に対して、エンタングルメント・エントロピーと自由エネルギーを用いて議論し、これまで議論されてきた予想を改善し、より一般の時空次元、そして、欠陥の次元に拡張した予想を提示することができた。相対エントロピーなど量子情報量の満たす不等式を用いた精密な証明には至らなかったが、長年議論されている問題に対して重要な発展を生むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度提出した予想について、相対エントロピーなどの量子情報量の満たす不等式を用いた精密な証明の議論を今後も継続する。また、その他にも今年度から取り組んでいる様々な研究課題がある。例えば、DCFTにおける量子的な平均正エネルギー定理、EEを一般化した相対レニイ・ダイバージェンスや純粋化量子もつれと呼ばれる量子情報量のモジュラー・ゼロ周波数を用いた計算法、薄められた光線演算子の交換子とBMS代数との関係の中心拡大による拡張などがある。これらの課題を次年度も議論し、様々な量子情報量を用いた場の理論や重力理論の様々な問題の解明を行っていく。
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