研究実績の概要 |
本年度当初に, これまで使用していたターボポンプおよびスクロールポンプ等計3台が故障し, 実験に使用するキセノンガスに大気が混入するトラブルが生じた. 本研究では高純度なキセノンガスを用いることで高エネルギー分解能を達成する検出器のため, これは検出器性能評価の面で深刻な問題であった. この問題に対し, 現状持ちうる機器のみで蒸留純化を行なった. また10kg(180L)のキセノンを保持するプロトタイプ検出器の設計製作も行った. 光検出器を設計通りの数だけ購入し設置するのが現段階では困難なため, まず小さいスケールで実験を行うこととした. 信号検出面を新たに分割構造として設計開発したことにより, この段階的な試験性能評価が可能になった. 実際にエネルギー分解能の性能評価を行ったところ, 先行するNEXT実験と同程度の0.79--1.52% (FWHM, Q値換算)の結果を得た. 将来, 地下で行う大規模な物理測定にむけて, 岐阜県神岡鉱山にある神岡地下実験施設を想定した将来の検出器についての基本的な設計概念をはじめて作成した. 新たに実験用坑道を掘削する場合と, すでにあるいくつかの検出器の跡地を再利用する場合において複数案を提言するとともに, その掘削費用についての概算を行った. 安全面および地下鉱山内への検出器搬入についても検討し, 問題のない設計をした. 以上のように, 本年度はトラブルも多少あったものの, 設計通りにプロトタイプが稼働することを確認し 511keV でのエネルギー分解能評価も行うことができ, 将来検出器としての可能性を強く示すことに成功した.
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