研究課題/領域番号 |
18J00367
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
新田 陽平 新潟大学, 研究推進機構 超域学術院, 特別研究員(PD) (30800429)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 伝播 / パーキンソン病 / 神経変性 |
研究実績の概要 |
昨年度に実施した研究において、ヒト脳に近いin vivoモデルを作成した。しかし、このモデルでは時間経過によって病変型αシヌクレインが凝集することは観察されたが、他細胞への凝集の伝播を確認することは出来なかった。このモデルを用いて、変異がヒトαシヌクレインの伝播に影響を与える可能性が示唆されている遺伝子(GBA、LRRK2、Atg1)を操作し、伝播現象が観察されるか実験を行った。 その結果、オートファゴソームの誘導に関与するAtg1遺伝子を病変型αシヌクレイン発現細胞でのみノックダウンした場合、その細胞の近隣に凝集型αシヌクレインが観察された。これらの凝集型αシヌクレインは一部の細胞で発現させた病変型αシヌクレインに由来している可能性が低く、全神経細胞で発現している正常型αシヌクレインに由来すると言える。つまり、αシヌクレインの凝集という”病態”が他細胞へと伝播している可能性が強く示唆される。インジェクションやウイルス等による外部からの侵襲を伴わない伝播モデルは未だ報告されておらず、本モデルはその先駆けとなる可能性を強く秘めている。なお、GBA遺伝子のノックダウンやLRRK2変異型の過剰発現では、この様な現象は観察されなかったことからオートファジーを制御することが伝播の有無に影響していると考えられる。来年度では、生化学的手法などを用いて凝集型αシヌクレインのキャラクタリゼーションを行い、データが出揃い次第、世界初のin vivo伝播モデルとして論文投稿を目指す
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度にヒト脳に近いin vivoモデルを作成したが、このモデルでは時間経過によって病変型αシヌクレインが凝集することは観察されたが、他細胞への凝集の伝播を確認することは出来なかった。しかし、オートファジーの機能阻害が病態の脳内伝播のトリガーになることを見出し、非侵襲的な病態伝播ハエモデルの樹立に成功した。今年度は、このモデルにて確認された凝集型αシヌクレインのキャラクタライズを行い論文投稿を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに作成したショウジョウバエモデルにおいて確認された、異所性の凝集型αシヌクレインのキャラクタライズを行う。その為に、免疫組織化学的手法や生化学的手法を駆使する。具体的には、様々な構造特異的αシヌクレイン抗体等を用いて、本モデルで確認された凝集型αシヌクレインがどの様な構造をとっているか・どのような修飾を受けているか判別する。また、タンパク質を抽出し、どの様な構造をとっているか、実際に凝集誘導能があるのか生化学的実験から明らかにする。また、オートファジーのどの段階が異所性αシヌクレインを形成するのに重要なのか検証するために、Atg1以外のオートファジー関連因子を阻害し、同様の凝集体が形成されるか確認を行う。これらの実験を通して異所性αシヌクレインのキャラクタライズが完了次第、世界初のin vivo伝播モデルとして論文投稿を目指す。並行して、このモデルを用いて疾患タンパク放出源の特定を目指す。エキソサイトーシスを抑制するTetanus toxinを発現させたり、エキソソームの放出に必須であるykt6遺伝子やナノチューブの形成に必要な鞭毛内輸送関連因子であるoseg2遺伝子等をRNAi法で抑制したりして伝播が抑制されるか確認し、放出方法を特定する。その後、それぞれの放出方法に関与する遺伝子を対象としたRNAiスクリーニングを行い伝播に決定的な役割を果たす因子を同定し、それらの変異体やトランスジェニック系統をCRISPR/Cas9法を用いて作製してαシヌクレインが伝播源となる小胞に入り込む分子機能を明らかにする。
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