前年度までに実施した研究において、ヒト脳に近いin vivoモデルを作成し、このモデルにおいてAtg1遺伝子を病変型αシヌクレイン発現細胞でのみノックダウンしたところαシヌクレインの凝集という”病態”の他細胞への伝播が促進されている可能性が強く示唆された。本年度ではこの研究を発展させ、オートファジーと伝播の関係性の解明、凝集型αシヌクレインのキャラクタリゼーションを試みた。 まず、オートファジーと伝播の関係性を解明するために、Atg1以外のオートファジー関連因子(Atg5、Atg17)をノックダウンした。その結果、これらのオートファジー関連因子では伝播の促進が観察されなかった。Atg1はオートファジー非依存的な機能を有することが多くの研究で報告されており、それらが伝播を促進している可能性が示唆される。 次に、伝播した凝集型αシヌクレインのキャラクタリゼーションを試みた。次に、凝集αシヌクレイン特異的抗体(5G4抗体)と抗リン酸化αシヌクレイン抗体、抗ユビキチン抗体、抗p62抗体をそれぞれ共染色し、免疫学的手法を用いて5G4抗体で検出される凝集のキャラクタライズを試みた。その結果、5G4抗体で染色される凝集の多くは抗リン酸化αシヌクレイン抗体(S129)や抗ユビキチン抗体、抗p62抗体で共染色されることが判明した。これらの結果は、5G4抗体で検出された凝集が非特異的結合やオフターゲットではなく真にαシヌクレインの凝集である可能性を強く示唆しているだけでなく、ヒトやマウスモデルで報告された凝集と同様の性質を有している可能性を強く示唆している。今後は、伝播した凝集に対してProteinase K抵抗性実験を行い、データが出揃い次第、世界初のin vivo伝播モデルとして論文投稿を目指す。
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