等質開凸錐に付随する多変数ゼータ関数の函数等式において、昨年度明らかにしたガンマ行列(函数等式の係数行列)が各変数の積に分解され、さらに特別な場合には対角化および完備化されるという結果は、準指標付きの基本相対不変式のフーリエ変換の公式と見做せることを明らかにした。非簡約な概均質ベクトル空間に付随するゼータ関数に対して類似の先行研究はあまり見受けられず、興味深い結果である。
グラフィカルモデルに関連する行列空間の固有値分布について、星型グラフ(デイジーグラフ)に対してウィグナー型およびウィシャート型という2種類のランダム行列を導入し、それらに対する固有値分布関数の明示的な公式を得た。特にウィシャート型における固有値分布関数は、ランベルト関数を一般化した関数(ランベルト-ツァリス関数)を用いて記述される。このランベルト-ツァリス関数についても性質を詳しく調べており、現在論文を準備中である。またA3型のグラフや多重対角行列など、他のグラフィカルモデルに対する計算も行っている。本研究はPiotr Graczyk教授との共同研究である。
等質空間上の不変微分作用素環について、昨年度に発展させた手法を用いて、Ishi-Kogiso (2016)で予想された sub-Hankel 行列式に関する概均質ベクトル空間のb-関数の公式について、肯定的に解決した。その過程において、この概均質ベクトル空間の基本相対不変式の満たすカペリ型恒等式を明示的に与えている。
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