研究実績の概要 |
本研究では、動物体内で臓器を創成する胚盤胞補完法を用いた幹細胞由来臓器移植の実現を目指し、ヒト再生医療の実用化を円滑に進め得るトランスレーショナルリサーチとして、イヌ幹細胞由来膵臓のブタ体内での作製および作製臓器を用いた移植治療を目的とし研究を進めている。胚盤胞補完法は、特定の臓器が欠損した動物胚に多能性幹細胞(PSCs)を挿入することで、動物体内の臓器ニッチを利用して移植幹細胞由来の補完臓器を作出する手法であり、本手法を用いて機能的なヒト臓器を動物体内にて作製することができれば、世界中で問題となっている移植臓器の慢性的な不足を解決できると期待されている。令和2年度は前年度に開発したキメラ体内でドナー細胞のキメリズムを飛躍的に上昇させる新規手法(細胞競合ニッチ法)のさらなる解析を進め、その結果、①細胞競合ニッチにて支配的に増殖したドナー細胞はしばしばホスト臓器を乗っ取ること、②細胞競合ニッチ法で誘導されたドナー由来腎臓は正常な機能・組織構造を有していること、および③本ニッチは高いキメリズムを有する異種間キメラにおいて胎生致死を誘導しないことを見出した。また、本研究内容について論文発表(Nishimura et al., Cell Stem Cell. 2021)、学会発表(第20回再生医療学会総会・口頭発表)を行い、研究成果を社会に発信するとともに、得られた研究結果の米国特許申請を行うことで産業に結び付ける足掛かりを作った。
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