研究課題/領域番号 |
18J00502
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 道洋 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | シリコン / ゲルマニウム / スピントロニクス / スピン伝導 / ホイスラー合金 |
研究実績の概要 |
本年度は,歪みSiGeスピンMOSFETの実現に向けて,強磁性/半導体界面特性の重要性を明らかにし,SiGeへのスピン注入・伝導ならびにSiGeチャネルを用いた磁気抵抗効果の実証を行なった. 初めに,強磁性ホイスラー合金/Ge界面を用いて強磁性/半導体界面の品質がスピン注入効率にどのように影響しているかを明らかにした.独自技術による原子レベルで界面制御した試料とアニールによりわざと界面を反応させた試料でスピン信号強度の比較を行なった.原子レベルで制御された界面のスピン信号は反応層が形成された界面に比べて信号が40倍程度大きく,高品質な界面の形成がスピン注入に非常に重要であることを実験的に明らかにした. これまで,SiGeへのスピン注入・伝導の報告はなく,歪み無しSiGe中のスピン緩和時間,スピン拡散長などは明らかになっていなかった.そこで,歪み印可の効果を観測する前段階として,歪み無しSiGe中のスピン伝導特性を明らかにした.歪み無しSiGeをチャネルに用いた横型スピン伝導素子を作製し,非局所4端子スピン信号測定を行なった.注入効率に大きく影響する界面が最適化されていないため50 Kと低温ではあるが,スピン信号の観測に成功し,世界で初めてSiGe中のスピン注入・伝導・検出を実証した.実験で得られたスピン信号(Hanle信号)を解析することで,SiGe中のスピン緩和時間やスピン拡散長などの重要なパラメータも決定した.さらに,得られた知見と確立された技術を用いることで,スピンMOSFETの実現に不可欠な局所2端子測定による磁気抵抗変化をSiGe中において世界で初めて観測することに成功した. 以上の成果によりSiGe中のスピン伝導技術は確立され,今後,歪み印可SiGeチャネルを用いることと界面特性の最適化を行うことで室温での巨大磁気抵抗変化の観測が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室温SiGeスピンMOSFETの実現には,室温でのスピン信号の巨大化が最も重要な課題の一つである.本年度の成果から強磁性体/半導体界面の重要性を明らかにし,その指針を得ることに成功した.また,低温ではあるが歪み無しSiGeへのスピン注入,伝導の観測にも成功し磁気抵抗変化の観測にも成功した.以上のことから,SiGeへのスピン注入・伝導の基盤技術を確立し室温スピン信号の巨大化への指針を得たため,「2 : おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,得られた知見をもとに,強磁性ホイスラー合金/SiGe界面の高品質化を実現することで,スピン注入効率の向上,スピン信号の増大を目指す.高品質化を実現するために界面の反応を抑制する反応抑制層を導入する.その後得られた高品質界面を用いて,歪み印可SiGeへのスピン注入を行うことで室温付近でのスピン信号の観測をし,スピン緩和機構を明らかにする.これまで得られている歪み無しSiGeのスピン緩和時間,スピン拡散長を比較することで,歪みによる効果を検証する.さらに,SiGeのGe組成,歪み量などを変化させることで,歪みの効果を詳細に評価する.
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