研究実績の概要 |
本研究の目的は, 気体力学の基礎方程式である非圧縮性もしくは非圧縮性 Navier-Stokes 系の適切性を示し, 解の安定性や時間無限大での漸近挙動を解析することである.
平成30年度においては, 研究計画の第一段階として, Besov 空間, Fourier-Lebesgue 空間や Fourier-Herz 空間における関数不等式の整備を行った. Fourier-Lebesgue 空間における Sobolev 不等式と凸型 H\"older 不等式の応用として, 一般的な形の Gagliardo-Nirenberg 型の補間不等式を証明し, 特に指数を制限した場合, 古典的な Sobolev の埋め込みのある意味での改良にもなっていることを明らかにした. また, 応用として非圧縮性 Navier-Stokes 系に対して知られている Beir\~{a}o da Veiga による尺度臨界時空ノルムに関する爆発判定条件を改良した.
また, 液体と気体が混在する二相流体の相転移を記述する圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 系を考察し, 臨界空間における時間大域可解性と時間減衰評価を示した. 特に capillary tensor が存在しない通常の圧縮性 Navier-Stokes 系の線形化方程式において零固有値が出現する音速が零の場合でも, 圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 系の線形化方程式は安定となることを観察し, この場合に特化した解析結果を得た. 以上の結果は査読付き論文雑誌に受理され, 掲載済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流体力学において用いられる主要な関数空間において相当に一般的な形の Gagliardo-Nirenberg 型の関数不等式を示し, その流体方程式への応用を考察し, 研究計画の第一段階を達成した. また, その直接の適用によるものではないが, 二相流体を記述する圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 系を考察し, 既存の適切性理論を押し広げることに成功したため, 進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては, 研究の目的の段階 3) において挙げた, 圧縮性粘性流体の定常解の性質を調べ, スペクトル解析を用いてその漸近安定性を示す. そのために現在圧縮性 Navier-Stokes 系に対する非自明定常解の構成に着手している. この定常解に対する摂動方程式を考察することで, 非定常流の解析を行う予定である.
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