まず、今年度の研究の第一の成果として、低金属量星の連星進化コードを共同研究者と完成させたことである。現在、重力波で観測された重い連星ブラックホール合体の起源として超低金属環境でできた連星が注目されているが、金属量ゼロの初代星の研究(申請者の先行研究)を除くとせいぜいが太陽の200分の一の金属量までしか低金属量星の連星進化計算を行われておらず、この間をつなぐ連星進化研究を行うことが、重力波で検出されるブラックホールの形成環境を探るうえで急務である。本論文をそれを行うための計算コードを整備した。 次に大きな成果となるのが重力波観測を用いたIa型超新星の同定方法の検討である。Ia型超新星の母天体はまだわかっておらず、天文学における重要な未解決問題である。有力な説として大きく分けて、白色矮星同士の連星合体(DD説)と白色矮星と通常の星からなる連星において通常の星から白色矮星への降着による爆発(SD説)の二つがあるが、まだ決着はついていない。我々はこの問題を解決するために、白色矮星同士の合体の重力波による観測に着目した。将来計画において0.1Hz帯で10-20Hz-1/2程度の感度があれば、白色矮星合体を年一回程度重力波で観測できることがわかった。さらに、DECIGOによる重力波観測の位置決定精度について調べ、DECIGOで観測される連星白色矮星合体のほとんどの母銀河特定が可能であることがわかった。これにより、将来の重力波観測と電磁波対応天体の同時観測により、Ia型超新星の母天体の特定または制限が可能であることを示した。
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