動物のオスは射精の際に交尾経験や体サイズなどの配偶相手の状態に応じて、放出する精子の量を変化させることが知られている。この現象は「戦略的な射精行動」と呼ばれ幅広い動物種で観察されている。本研究では、キイロショウジョウバエを用いて戦略的な射精行動を実現する神経メカニズムを明らかにすることを目指す。キイロショウジョウバエでは、感覚情報処理の神経メカニズムが明らかになりつつある。本種を用いることで、射精とそれに伴う戦略をもたらす仕組みを高い解像度で理解できるのではないかと考えた。この目的を達成するために、キイロショウジョウバエの雄の行動を詳細に観察可能な実験系を確立することが重要である。 そこで、一匹の雄個体を拡大して子細に観察できる行動記録系を立ち上げた。さらに、先行研究によって射精を引き起こすことが知られている神経細胞群にチャンネルロドプシンを発現させ、光遺伝学的にこの細胞群を強制活性化することで、射精の際の雄個体の行動を観察することに成功した。今後は、この系をさらに発展させることで、射精の際に雄がとる行動を観察するとともに、雌に由来するどのような感覚刺激を受けて射精が引き起こされるのかを調べる。これによって、キイロショウジョウバエを用いて戦略的な射精行動をもたらす神経メカニズムの理解を目指す。
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