研究課題
本年度は治療前の患者変動を含んだ多元的医用画像データベースを構築した.そして,構築した多元的医用画像データベース内の全画像から高次元の定量的な画像特徴量を抽出し,多元的潜在構造・因子 (multi-disciplinary potential structure and factor: MPSF) モデルを構築した.本研究では神経膠腫を対象とした.治療前に撮像された悪性神経膠腫患者73例 (グレード III: 28例,グレードIV: 45例) のMR (magnetic resonance) 画像を収集し,多元的医用画像データベースの構築を行った.構築した多元的医用画像データベース内の全てのMR画像において腫瘍輪郭を手動で抽出し,腫瘍内における476個の定量的な画像特徴量を抽出した.そして,全ての患者における高次元の画像特徴量を用いて患者の予後と相関するグレードを予測することを目的としたMPSFモデルを構築した.MPSFモデルとは多元医用画像データベースにおいて,ある潜在的構造を構成する少数の因子 (低次元データ) によって患者内外の変動を表現するモデルである.悪性神経膠腫グレード予測のためのMPSFモデルは画像特徴量を入力とし,スパースモデリング手法であるLASSO (least absolute shrinkage and selection operator) ロジスティック回帰を用いて構築した.さらに,LOOCV (leave-one-out cross validation) を用いてMPSFモデルの精度評価を行い,結果として悪性神経膠腫のグレード予測を精度良く行える可能性を示すことができた.本年度の研究成果は2報の英語原著論文および国内外の多数の学術会議にて報告した.そして,当該研究に関連する知識・技術を解説した論文が日本医学物理学会誌に掲載された.さらに,現在研究成果を1報の英語原著論文としてまとめ,海外の学術雑誌に投稿中である.
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は当初の計画通り,神経膠腫を対象とした治療前の患者変動を含む多元的医用画像データベースを構築し,データベース内の画像から抽出される定量的な特徴量を用いて悪性神経膠腫グレード予測のためのMPSFモデルを構築した.さらに,MPSFモデルの精度検証を行い,結果としてMPSFモデルに基づいて悪性神経膠腫のグレード予測を行える可能性を示すことができた.したがって,本年度は期待以上の研究成果が得られ当初の計画以上に進展したといえる.
今後,対象症例を神経膠腫だけでなく肺がん,頭頸部がんなどに広げ,症例を多数追加し多様なモダリティ画像で構成される治療前・治療中における患者内外変動を考慮した大規模な多元的医用画像データベースへと拡張させる予定である.そして,拡張させた多元的医用画像データベースからMPSFモデルを構築し,モデルパラメータと腫瘍の形態・治療成績との間で機械学習を用いて治療後の患者予後予測を目的とした高精度の回帰・分類モデルを構築する予定である.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
医学物理
巻: 38 ページ: 129~134
https://doi.org/10.11323/jjmp.38.3_129
Cureus
巻: - ページ: -
https://doi.org/10.7759/cureus.2548
Radiation Oncology
巻: 13 ページ: -
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http://u-tokyo-rad.jp/index.html