研究課題
本年度は,公開されているデータベースに収録されている治療前における神経膠腫患者データを用いて多元的医用画像データベースを構築した.さらにこの公開されたデータによる多元的医用画像データベース内の画像から画像特徴量の抽出を行なった.そしてこれらよりMPSFモデルを構築し,自施設での多元的医用画像データベースを用いてMPSFモデルの精度および頑強性を評価した.自施設で撮像された治療前の悪性神経膠腫67例およびTCIA (the cancer imaging archive) に収録されている悪性神経膠腫157例のMR造影T1強調像,T2強調像を用いて各々の多元的医用画像データベースの構築を行なった.各々の多元的医用画像データベースから前年度より次元を増やし5912の画像特徴量を抽出した.TCIAの多元的医用画像データベースから抽出した特徴量をLASSOにより選択し,選択された低次元の特徴量を用いて患者の予後と相関する悪性神経膠腫のグレードを予測するためのMPSFモデルを構築した.MPSFモデルの構築にはロジスティック回帰,サポートベクターマシン,人工ニューラルネットワーク,ランダムフォレスト,ナイーブベイスを用いた.MPSFモデルは自施設の多元的医用画像データベースにおけるTCIAの多元的医用画像データベースで選択されたものと対応する特徴量を入力とし評価を行なった.評価指標はAUC値を用いた.5つの機械学習に基づくTCIAの多元的医用画像データベースを用いて構築したMPSFモデルにおける入力を自施設の多元的医用画像データベースとした時のAUC値の平均は0.747±0.034 (95% CI, 0.705-0.790)であり,ランダムフォレストを用いて構築したMPSFモデルがAUC値: 0.800と最も高い値を示した.
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は,TCIAに公開されている悪性神経膠腫の症例データを用いて,昨年度から拡張させた多元的医用画像データベースを構築した.そして,TCIAのデータを用いて構築した多元的医用画像データベースからMPSFモデルを構築し,自施設の多元的医用画像データベースをテストデータとして精度評価を行なった.また,次年度に行なう予定の治療中の統計変動を含む多元的医用画像データベースの構築にすでに取り掛かっている.以上より本年度は期待以上の研究成果が得られ当初の計画以上に進展したといえる.研究成果は国内外の学術会議で発表した.さらに本研究の結果を論文としてまとめ,海外の学術雑誌であるScientific Reports誌に掲載された.
今後は放射線治療中に撮像されるCBCT (cone-beam computed tomography) 画像や経過観察を目的として撮像されるCTやMR画像を収集し,治療中および治療後の患者統計変動を考慮した大規模な多元的医用画像データベースへの構築を行う.構築した多元的医用画像データベースを基にMPSFモデルを構築し治療後の患者予後予測システムを構築する予定である.予測する予後の尺度としてはOS (overall survival),DFS (disease free survival) などを用いる.MPSFモデルの構築に前年度,複数の機械学習アルゴリズムを用いたが本年度はさらに多様なアルゴリズムを試し予後予測に有効なアルゴリズムの模索,検討を行なう予定である.
東京大学医学部附属病院 放射線科 放射線治療部門http://u-tokyo-rad.jp/index.html
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