本研究の目的は、人間環境の批評をより十全に説明する理論を構築することにある。この目的は①基礎研究、②個別研究、③事例分析の3つのステップを経て達成される。 本研究課題は令和2年度末を持って終了する予定であったが、令和2年11月から令和3年12月まで(うち令和3年9月から令和3年12月までは研究再開準備支援期間)、出産・育児を理由とする採用中断期間を取ったため、令和4年3月末を持って終了するよう期間が延長された。令和3年度に研究を進めた期間は、研究再開準備支援期間として4ヶ月間、採用再開後に3ヶ月間であり、合わせて7ヶ月間である。また研究再開準備支援期間がその過半数を占めていることから、実際に研究に充てられた時間はより少ない数字となる。 令和2年度および令和3年度は③の研究を進める予定であった。しかし、令和2年度に開催予定で主な調査対象となるはずだった奥能登国際芸術祭が令和3年度まで延期された。そのため、令和2年度は地域芸術祭に関する具体的な調査というよりも、その美的価値を査定するための理論的枠組みを確保する論文を執筆した。これは令和2年度中に査読を通過し、令和3年6月に『美学』72(1)(美学会)に掲載された。採用中断期間中ではあるが、令和3年7月にはこの論文をもととして、ART RESEARCH ONLINEにて、鼎談「地域芸術祭の鑑賞者はなにをみるのか」に登壇した。 本来であれば令和3年秋に開催された奥能登国際芸術祭にて研究調査を行うべきであったが、新型コロナウイルスの感染拡大と、研究者自身が授乳のために子どもから数日にわたって離れることができない時期であったため、断念した。代わりに、令和3年8月・9月には東京ビエンナーレを数日にわたって訪れ、研究調査を行った。この成果を踏まえ都市型の地域芸術祭に関する考察をまとめることは、今後の課題とする。
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