本年度は以下の2点で研究の進捗が得られた. 1つ目はこれまで取り組んでいた人口成長がない状況でも技術進歩が可能な循環的要因を生み出すR&D部門と定常的な人口成長の関係を分析した研究に関連したもので.Dixit-Stiglitz型独占的競争モデルの持つ扱いやすい性質の源泉である代替の弾力性が一定を維持しながら,同時に規模に関する収穫一定を必要としない設定の中で,特に規模に関する収穫逓減型の最終財生産関数と整合的な競争的な最終財生産部門の企業理論に関して,固定費用が存在する場合の企業数の内生的決定と,それによる経済全体の生産関数の生産性の決定を含めて分析を行った.この固定費用を仮定した収穫逓減型の生産構造と競争的な市場構造の組み合わせはYano (2001)などでこれまでの採用されてきた設定であるが,これを内生的成長モデルの文脈に応用することで,人口成長を一般的なR&D部門と最終財部門の構造で扱うことが可能となった. また本研究課題の1年目で得られた結果では,上記の模に関する収穫逓減型の最終財生産関数で利用する2段階の最適化を行う設定を応用することで,品質に関する異質性が存在する設定で品質に関する定常性を仮定することなしに動学的な分析が可能であることが得られている.これらの結果を組み合わせることにより,上記の結果は品質の梯子型の設定を用いた内生的成長モデルに関する様々な動学的な分析への応用が期待できると考えられる. 2つ目は亀井慶太氏(西南学院大学)と共同で実施した,国際経済学の文脈でR&Dによる製品差別化がR&Dを行うセクターと戦略的関係にある輸送企業の価格設定に与える影響を分析した研究に関連したもので.昨年度から継続して比較静学を中心として分析を洗練させた論文を英文査読誌へ投稿し,編集部からのrevise and resubmit要請により現在改定作業中である.
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