研究課題
メタ認知とは、行動制御に注目すると確信度などの内的状態に基づく行動制御であり、こういった行動を示すかに注目することで、ヒト以外の動物でもメタ認知の研究が可能となる。一方で、言語を持たない動物には用いる方略について直接的に教示出来ないため、記憶等の内的な状態を利用することが最も適応的になるよう実験者が設計した課題でも、動物が全く別の方略を用いる可能性を完全に排除することは難しく、動物のメタ認知研究の原理的な問題点とされてきた。そこで、本研究では記憶課題における記憶の利用や記憶想起への確信度の高さに対応する神経相関を探索した上で、これらの神経指標がみられた試行で正解した場合には報酬を増やし、逆に不正解だった場合は遅延罰を延長するという2次的な条件づけ(ニューラルオペラント)を実施し、ラットが特定の認知的方略に基づいて記憶課題を遂行するように誘導可能かを検討した。昨年度の研究により、すでにラットの内側前頭前野の神経活動が上記の神経相関として有効であることを示す結果を得ている。平成31年度は、これらの知見に基づき、ラットにおいて課題中にニューラルオペラントを実施した。神経相関とフィードバックの間の時間差が少なくなるように課題を工夫した場合、神経相関があった試行ではセッションの経過に応じて正答率が有意に上昇したが、同様の傾向は神経指標が生じなかった試行では見られない、つまりニューラルオペラントによってラットの課題解決方略を誘導可能であることを示唆する結果を得た。さらに、本計画の予備的検討であるラット課題と共通の構造を持つ記憶課題を用いたヒトのfMRI実験について、国際的な英語学術専門誌に筆頭著者として論文を投稿し、本年度に受理された。加えて、本研究計画を立案・遂行中に得られた知見に基づいてラットのメタ認知に関する総説を執筆し、これらも国際的な英語学術専門誌に受理されている。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Cortex
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