研究課題/領域番号 |
18J00897
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
越本 直季 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 重力マイクロレンズ / 太陽系外惑星 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は惑星存在量の銀河系内分布及び主星質量依存性を初めて解明することである。 重力マイクロレンズ法では、レンズ天体である惑星と主星の質量比は普遍的に測定されるが、質量を測定するためには特別な観測量が必要となる。本研究課題を進める過程において、Spitzer望遠鏡と地球の視点の違いを利用して特別な観測量の一つであるマイクロレンズパララックスを多数のイベントで測定するプロジェクト(Spitzer microlensing campaign)による観測的なマイクロレンズパララックスの分布(Zhu et al. 2017)と、銀河系のモデルから予測されるマイクロレンズパララックスの分布を比較したところ、10^{-8}オーダーのp値でそれら2つの分布は一致しないことがわかった。解析の結果、報告されているマイクロレンズパララックスの測定値の誤差を平均3.5倍大きくすると、この不一致は解消することがわかった。以前からSpitzerによるマイクロレンズの光度曲線データには系統誤差が乗っていることは知られていたが、光度曲線解析から得られるマイクロレンズパララックスの測定値への影響は無視できるとされてきた。本研究によってマイクロレンズパララックスの測定にも系統誤差の影響がある証拠を初めて示し、また、どれくらい測定値の誤差を過小評価してしまっているかを見積もった。この内容は1月の国際学会で発表し、また論文ももうすぐ投稿予定である。 この研究を通して、イベントの検出効率を計算することなく、銀河系のモデルとマイクロレンズの観測結果を比較する手法を確立した。この手法は本研究課題の達成のためにも有用であり、今後は同手法を過去の惑星イベントのサンプルに適用し、惑星存在量の銀河系内分布及び主星質量依存性の推定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、独自に開発した手法を用いることにより、これまでされていなかった重力マイクロレンズ法による惑星サンプルを用いて惑星存在量の銀河系内分布及び主星質量依存性を初めて推定する。この手法のユニークな点の一つとして、各サンプルの検出効率の計算をせずに上記の推定を行うという点がある。本年度は研究実績で述べた研究を通して、当初は漠然と描いていたこの手法を確立することができた。 一般に惑星のパラメーターの分布を見積もる際に一番時間がかかる手順が検出効率の計算であるため、ここを省略できることが確かとなったことは大きな進捗と言える。 一方で昨年度から取り掛かっている研究課題に関連する別の研究はまだ論文を出版できておらず、その点は予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは昨年度から取り掛かっている研究および、研究実績の概要で述べた研究を論文にまとめ、出版する。 概要にも述べたが、今年度の研究を通してイベントの検出効率を計算することなく、銀河系のモデルとマイクロレンズの観測結果を比較する手法を確立することができたため、この手法を過去の惑星イベントのサンプルに適用し、本研究の目的である惑星存在量の銀河系内分布及び主星質量依存性の推定を行う。
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