研究実績の概要 |
重力マイクロレンズ法では、惑星と主星の質量比は普遍的に測定されるが、質量を測定するためには特別な観測量が必要となる。特別な観測量の一つに、惑星系の主星の明るさがある。重力マイクロレンズ法による惑星系は、星が密集した銀河中心方向に位置するため、惑星系の主星の明るさの測定には、地上大望遠鏡を用いた高空間分解能撮像が必要となる。従来は、高空間分解能撮像を持ってすれば、ターゲットの明るさに関係のない星の明るさ(コンタミ)が混じる確率は無視することができ、惑星系の主星の明るさを測定できると考えられてきた。私は、この考えの根拠となる論理が誤っていることを指摘し、コンタミの確率を考慮して、惑星系の主星の明るさの確率分布を計算できる新たなベイズ推定法を確立した。この手法及び、過去のイベントへの適用結果を論文にまとめ、The Astronomical Journalに投稿・受理された。また、他の研究者がリードする研究にも本手法を適用し、惑星系の高空間分解能撮像画像に含まれるコンタミの確率を計算した(Blackman et al. 2020, Nagakane et al. 2019, Fukui et al. 2019)。特に、Fukui et al. (2019)では、日本のアマチュア天文家が偶然発見した銀河系中心と反対方向で起きた非常に珍しいマイクロレンズ現象に本手法を適用した。その結果、コンタミの確率が非常に低いことがわかり、マイクロレンズ法による最も明るい主星を持つ惑星系であることを明らかにした。この結果を連名でプレスリリースをした。
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