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2018 年度 実績報告書

MRIを用いた覚醒中枢領域における神経基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18J00922
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

阿部 欣史  慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2021-03-31
キーワード覚醒 / DTI / optogenetics / 線条体 / diffusion fMRI / 超解像顕微鏡
研究実績の概要

本研究の目的は覚醒の中枢領域を決定し、その神経基盤を解明する事である。その為に覚醒時における脳機能と脳構造の変化をMRIにより全脳探索的に解析する。候補領域として推測している領域は線条体である。薬物によって覚醒状態が高まっている時では、線条体神経細胞は継続的な興奮状態にある事が予想される。そこで本年度は、線条体神経細胞が継続的な活動を示した際、脳構造や脳機能にどのような影響を与えるのかを明らかにする為、脳機能や脳構造変化を可視化する新たなMRI技術の開発を試みた。線条体神経細胞の活動をoptogeneticsにより特異的に活動させた際の脳構造変化を可視化する技術(Opto-DTI)を開発した。この技術を用いる事で、線条体神経細胞を長期的に活動した際に、線条体を貫通する皮質神経の軸索におけるミエリンが薄くなっている事を発見した。また線条体神経細胞自身の繊維が細くなっている事が分かった。線条体の活動が脳全体に及ぼす影響を脳構造の観点から解析する事ができた。MRIで発見した構造変化は、超解像顕微鏡観察を利用した組織学解析によりミクロに確認した。
また、脳機能解析においても新たなfMRI技術を取り入れ、応用した。血流を介して神経活動を描出していた従来のfMRI技術では適切な線条体活動を描出する事が出来なかった。そこで、血流を介さずに神経活動やネットワークを描出できる技術を取り入れ、応用した。これにより線条体回路を適切に描出出来るようになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

長期的に線条体が活動した際の脳機能変化や脳構造変化を捉える新たなMRI技術の開発とその応用を行い、線条体回路における構造変化を明らかにすることができた。
線条体神経細胞の活動をoptogeneticsにより特異的に操作し、その時の脳構造変化をdiffusion tensor imaging (DTI)により解析するOpto-DTIという技術を考案し、実証した。さらにDTIによるマクロな解析だけではなく、超解像顕微鏡観察を取り入れ、組織学的手法によりミクロ情報まで明らかにし、MRIデータの信頼性を高めた。これらの技術によって、線条体神経細胞を長期的に活動した際には、線条体を貫通する皮質神経の軸索におけるミエリンが薄くなっている事を発見した。また線条体神経細胞自身の繊維が細くなっている事が分かった。
次に脳機能変化を可視化する新たなfMRI技術を開発と応用を行った。通常、fMRI技術はneurovascular couplingの原理に基いており、fMRI信号変化には血流動態が大きく影響する。特に線条体では神経活動とfMRI信号が一致しないという事例が多々あり、通常のfMRI技術では適切な神経活動を描出できない。そこで血流動態に依存しない新たなfMRI技術であるdiffusion functional MRI (DfMRI)の開発と応用を行ってきた(Abe et al., Plos Biol, 2017)。本年度はこのDfMRI技術を応用し、線条体回路の血流非依存的なネットワーク解析を目指した。従来のfMRI解析で行っているfunctional connectivity(FC)解析をDfMRIで応用する事で、血流非依存的な回路解析を確立させた。この回路解析技術を用いて、線条体の既存ネットワークを抽出する事が出来た。

今後の研究の推進方策

覚醒剤を長期的に投与し、覚醒状態を高めたマウスにおいて、線条体回路における脳構造や脳機能がどのように変化しているのかを、開発した技術(Opto-DTIやDfMRI)を用いて明らかにする。さらに、線条体神経細胞はドパミン受容体1型または2型のどちらかを持つ神経細胞が存在するため、この2種類の神経細胞をoptogeneticsによって切り分け、各細胞が線条体回路に及ぼす脳機能変化と脳構造変化を明らかにしていく。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Correlative study using structural MRI and super-resolution microscopy to detect structural alterations induced by long-term optogenetic stimulation of striatal medium spiny neurons2019

    • 著者名/発表者名
      Abe Yoshifumi、Komaki Yuji、Seki Fumiko、Shibata Shinsuke、Okano Hideyuki、Tanaka Kenji F.
    • 雑誌名

      Neurochemistry International

      巻: 125 ページ: 163~174

    • DOI

      10.1016/j.neuint.2019.02.017

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spatial contribution of hippocampal BOLD activation in high-resolution fMRI2019

    • 著者名/発表者名
      Abe Yoshifumi、Tsurugizawa Tomokazu、Le Bihan Denis、Ciobanu Luisa
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: 3152

    • DOI

      10.1038/s41598-019-39614-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] オプトジェネティクスにより誘導された軸索構造変化の新規可視化技術2018

    • 著者名/発表者名
      阿部欣史
    • 学会等名
      第61回日本神経化学会
  • [学会発表] Resting state DfMRI revealed alterations of brain activity and network in obsessive compulsive disorder mouse model2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshifumi Abe, Yuki Sakai, Hiroaki Hamada, Norio Takata, Kenji Doya, Kenji Tanaka
    • 学会等名
      Annual meeting of ISMRM
    • 国際学会
  • [学会発表] A correlation of resting state DfMRI signals reflects functional connectivity in awake mouse2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshifumi Abe, Yuki Sakai, Hiroaki Hamada, Norio Takata, Kenji Doya, Kenji Tanaka
    • 学会等名
      Annual meeting of ISMRM
    • 国際学会
  • [備考] 所属研究室ホームページ

    • URL

      http://psy-keiomed-ect.com/

  • [備考] researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/Yoshifumi_Abe/

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公開日: 2019-12-27  

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