研究課題/領域番号 |
18J00928
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
三品 達平 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 無性生殖 / ゲノミクス / 染色体分配 / フナ |
研究実績の概要 |
本研究は、稀な有性生殖を介する無性型3倍体フナをモデルとして無性生殖の分子基盤を解明することを通じて、染色体分配の制御機構のもつ進化生態学的理解を深めることを目的とする。そのために、(1)生殖様式の違いと関連する責任ゲノム領域の探索、および(2)卵母細胞において有性型と無性型間で発現量が異なる遺伝子群の機能的特徴の解明、(3)これら解析から絞り込まれた無性生殖の責任候補遺伝子の機能解析を行うものである。 初年度は,まず研究全体の基盤となる日本産フナ類におけるゲノム配列決定を進めた。10X Genomics社のChromium合成ロングリード技術に加え、Oxford Nanopore社のMinIONおよびPromethIONで得られたロングリードを併用してアセンブルした。これにより、今後の研究の基盤となる高品質なドラフトゲノムを得ることができた。 そして、(1)を実施するために、これまでに日本およびユーラシア広域から採集したフナ類についてマイクロサテライト法を用いた有性型・無性型の分子同定を行い、その地理的な集団構造を明らかにした。これらの結果を踏まえてサンプルの選定を行った上で、多数個体の有性型および無性型フナについてRAD-seqやリシーケンシングを実施した。得られた大量配列データからゲノムワイドに多型情報を取得し、系統ゲノミクス分析および全ゲノム関連解析を進めた。また、(3)を実施するためにフナ類における卵母細胞のin vitro培養の条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に当初の目的に沿って研究を遂行した。 まず、日本産フナ類のゲノム配列を決定するために10X Genomics社の合成ロングリード技術およびNanopore社のMinION/PromethIONによるロングリードを用いてアセンブルした。この結果高品質なゲノム配列を得ることができた。 (1)について、これまでに広域から採集した多数個体の有性型および無性型フナ類についてマイクロサテライト法を用いて分子同定と地理的な遺伝的集団構造を明らかにした。そして、選定した多数個体の有性型・無性型フナ類についてRAD-seqを実施した。この際にDNAの濃度が低い・断片化しているなどの問題が見られたために、手法の最適化を行いながら実験を進めた。研究計画とくらべてやや遅れているものの、幅広い質のDNAに対して適用可能な実験・解析系を確立できた。 (3)については、培養条件の検討を進めているが、核膜崩壊にいたる卵母細胞の割合が低いという問題がある。卵母細胞の単離方法および培養試薬について引き続き条件検討を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
(1)については、初年度にRAD-seq法で取得した多数個体の有性型・無性型フナ類における多型情報を用いて無性生殖の原因遺伝子の特定を進める。また、系統ゲノミクス的解析により無性型フナ類のゲノム特性とその進化過程を明らかにする。 (2)に関しては複数系統の有性型・無性型のフナ類における卵母細胞のRNA-seqを実施し、無性生殖と関連する遺伝子群の機能的特徴を明らかにする。 (3)については、初年度に引き続き、培養条件の検討を進め、有性型・無性型の減数分裂過程の記載を進める。
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