研究実績の概要 |
p-優調和関数を含む一般の楕円型方程式の非負解に対する Carleson 評価を与えた. 同様の議論により内部一様領域上の Harnack 型の不等式と局所最大値原理型の不等式をみたす非負関数への評価が得られることがわかった. 証明の副産物としてそのような Harnack 型不等式をみたす非負関数への大域的積分評価が得られた. ダブリング測度を備えた距離速度空間でも同じ議論ができると考えて研究中である. 共同研究者の Seesanea 氏と Sobolev 型の埋め込み定理の一種である L^{p}-L^{q} トレース不等式と, それに対応する Euler-Lagrange 方程式の研究を行った. これは p-調和関数の Wiener 判定にあらわれる Wolff ポテンシャルの評価と関連するものである. また, 埋め込み先の空間の測度として集合の境界の上の集中する測度を選ぶとトレース型不等式が得られるため, 解の境界挙動とも関連する. この不等式の, 過去に二進立方体分割を利用して証明が与えられていた部分に, p-優調和関数の Wolff ポテンシャルによる両側からの評価と Picone 型不等式を利用した抽象的かつ単純な別証明を与えた. また, これを一般化相互エネルギー積分に対する評価に拡張した. これらの評価により, 対応する Euler-Lagrange 方程式に非斉次をつけた方程式に対しても解の構成が可能になった. 証明方法の抽象化により, 重み付き多様体などを含むダブリング測度と Poincar'{e} の不等式を備えた距離速度空間での同様の評価と対応する方程式の解の構成への道筋がついた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
L^{p}-L^{q}型トレース型不等式にとそれに関する方程式, 不等式に対して予想外の成果があった一方で, 放物型方程式の境界正則性の研究については十分な進展を得ることができなかった. Carleson 評価の利用しやすい形の定式化, および過去の結果との比較に手間取ってしまい, 年度中に論文としてまとめることができなかったことは残念である.
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今後の研究の推進方策 |
L^{p}-L^{q} トレース不等式とそれに対応する Euler-Lagrange 方程式の研究を発展させる. 本年度は, ダブリング測度とPoincar\'{e} の不等式を備えた距離速度空間上で同様の結果を出すことを狙う. また,このエネルギーの評価を移流拡散方程式を含む放物型方程式のエネルギーに応用することに取り組む. 具体的には, 解の正則性のための係数関数の条件づけに放物型エネルギーについて L^{p}-L^{p} 型トレース不等式があらわれると考えている. さらにこれらの評価と流体の方程式との関連を探る. 距離速度空間上のポテンシャル論と関連して, メッシュ上の楕円型方程式とその収束の研究を行う. 特に, 近年登場した unfolding 作用素を使った均質化法とその有限要素法との関係を, 距離速度空間でのポテンシャル論の観点から再構成することを考える.
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