研究課題/領域番号 |
18J00965
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原 宇信 北海道大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | Sobolev 空間 / 楕円型偏微分方程式 / 正則性理論 / ポテンシャル論 / 優調和関数 / 埋め込み定理 / 変分法 / 均質化法 |
研究実績の概要 |
1) 北海道大学同僚の Seesanea 研究員と L^{p}-L^{q}トレース不等式とそれに対応する(測度係数の低階項をもつ Euler-Lagrange 方程式の研究を行った。これは p-調和関数の Wiener 判定にあらわれる Wolff ポテンシャルの評価と関連するものである。近年Verbitsky らはポテンシャル論的な手法を使い、この方程式の解の可積分性、係数の測度の一般化エネルギーの有限性、および解の構成に使われる重み付きノルム不等式の成立が互いに関連していることを明らかにした。我々は測度係数の低解項を複数もつ方程式でも2つの測度の一般化相互エネルギーを評価することでやはり正値解の構成ができることを示した。この解の存在は重み付きノルム不等式の成立の十分条件にもなる。この研究成果はすでに国際誌に受理された。また、中国, 南開大学における研究集会Analysis and PDEs on Manifolds and Fractals において発表を行った。年度末には、いままでの Verbitksy の理論では取り扱えなかった一般の領域のトレース不等式を考察し、その場合でも類似の定理を証明するための筋道がついた。この場合は領域境界で発散する係数関数を考えなければならないため、全空間での結果を応用することはできない。そのため、全空間上での問題で利用していた Wolff ポテンシャルを、対応する p-Poisson 方程式の極小正優調和解で置き換えることを考えた。また、それを実現するための非線形ポテンシャル論の道具を準備した。
2) 北海道大学正宗教授の主催する周期的均質化法の勉強会に参加し、同理論の研究を行った.。勉強会の議論で得た知識、経験をもとに、北海道大学において大学院生向けの集中講義を行った。また、そのための教材を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 全空間でのトレース不等式の研究は期待以上に進展し、投稿論文が年度中に受理された。さらに研究成果について中国での国際学会で発表できた。論文投稿後も関連する研究を続け、年度末までに一般のユークリッド空間内の領域でも類似の定理を証明するための筋道がついた。結果としてトレース不等式の最良定数と対応する Euler--Lagrange 方程式の Dirichlet エネルギーの間に指数のみに依存した両側評価の対応がつくことがわかった。これは研究開始時点では予期しなかった成果である。
2) 均質化法の研究は順調に進行し、集中講義が可能なレベルまで理解が進んだ。また教材を作成できた。
年度末のコロナウイルスの影響で他大学の研究者との議論の機会を失ったのは、均質化法の応用をさぐる上では残念だった。しかし、当初の計画に支障が出るようなものではなかった。
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今後の研究の推進方策 |
有界領域上でのトレース不等式の研究は、内容的にはほぼ終了しているので、年度前半に速やかに投稿したい。さらに解の係数関数への連続依存性についてどのような位相を考えるのが適切かを考える。その後は前年度からの共同研究者の Seesanea 氏と重み付き多様体上の sub-elliptic ベクトル場で対応物を考える。また、その応用を探る。同様のポテンシャル論的な手法は Dirichket 形式に対しても応用できる。実関数論的な応用を考えたい。
均質化法と教材作成は今も進行中である。数値解析に関連した実例を挙げてより良いものにしたい。
コロナウイルスの影響でこの計画の記入時点では出張での発表、情報収集などは困難な状況である。そこで Zoom や Skype で行われているウェビナー形式の研究集会に積極的に参加することを考えている。また研究発表のための方策をさぐる。そのために有用な機材は早めに購入したい。
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