当初の予定では、(A)複数枚の2次元画像同時表示、(B)3次元物体の高精細可視化、(C)接触型ユーザインターフェイスの3つを平行して取り組んでいく予定であったが、予定を変更して(C)を中心に研究を進めた。その主な理由は、この技術のかなめである超音波制御技術の最先端をゆくSriram Subramanian教授の研究室とコンタクトを取り、共同研究を行うことで、大幅に進展したためである。 この研究室では、既に超音波浮遊を行うためのシステムが開発されていた。そこで、このシステムに改良を行うことで、接触型の3次元ディスプレイインターフェイスを構築することにした。 始めに取り組んだのが、超音波振動子を制御するためのFPGA(Field Programabble Gate Array)および制御ソフトウェアの改良である。従来のシステムでは、各振動子のアップデートレート(fps)に限界があったが、これを改良することで理論限界である40Kfpsを達成することに成功した。これによって小さなポリスチレンビーズを高速(最高速度約8m/s)に浮遊・移動させることが可能となった。つまり、人の目の残像効果を利用することによって、1個のビーズだけで空中3次元像を表示することができるようになった。 また、超音波を利用することで、視覚だけでなく聴覚や触覚も提示可能であることが知られている。本研究では、開発したシステムの高速アップデートレートを利用することで、視覚・聴覚・触覚という3つを時間分割的に表示可能なマルチモーダル空中3次元ディスプレイの開発に、世界で初めて成功している。
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