研究課題/領域番号 |
18J01019
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
橋詰 雅斗 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | Hardy-Sobolev不等式 / Trudinger-Moser不等式 / 変分問題 / 非線形楕円型方程式 |
研究実績の概要 |
今年度の研究成果は主に二つあり、一つはHardy-Sobolev項及びHardy項が含まれる非線形楕円型方程式の可解性及び解の定性的研究、もう一つはTrudinger-Moser不等式に関連する変分問題における結果である。 Hardy-Sobolev項及びHardy項が含まれる非線形楕円型方程式の研究においては、Neumann境界条件の問題を考察した。前年度までに得られていたHardy-Sobolev項のみの問題における解の存在及び一意性の結果を用いて、領域が球の場合の球対称性の結果を証明し、さらに、特定の条件下では動径方向に非増加であることも証明した。この結果を踏まえ、Hardy項も含む楕円型方程式への結果の拡張を考察した。特異解が無限個存在する結果、非存在の結果等幾つか結果を得ることができた。 Trudinger-Moser不等式に関連する変分問題においては、古典的Trudinger-Moser不等式における変分問題の最大化関数が存在するという既存の結果をもとに、最大化関数の存在、非存在を分ける汎関数の形の1つを具体的に明らかにした。この結果により、変分問題の観点から見たTrudinger-Moser汎関数における非コンパクト列とコンパクト項の関係性が明らかになった。 今年度は7月に台湾で行われたThe 12th AIMS conferenceを始め、日本数学会など計11回の講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度得られた主な二つの結果(Hardy-Sobolev項、Hardy項を含む非線形楕円型方程式に関する結果、Trudinger-Moser不等式に関連する変分問題に関する結果)によって、研究目的に近づくことができたのではないかと考える。 楕円型方程式の研究に関しては、解の可解性、解の個数、球対称性という観点から、かなり厳密なところまで明らかにできたのではないかと考える。また、これらの研究は国立中央大学(台湾)のJann-Long Chern氏、Yeungnam大学(韓国)のGyeongha Hwang氏との共同研究であり、海外の研究者と繋がりを持ち、共同研究を行ったということも大きなことであると考える。 一方、Trudinger-Moser不等式に関連する変分問題においても、集中現象とコンパクト性の関係性などを推測することが可能な結果を得ることができ、今後更なる発展が見込めるものを得ることができた。特に存在、非存在を分ける汎関数の形を具体的に書き表すことができたというのは非常に大きなことであると考えている。 以上のことから、本研究課題の目的を達成するための研究の進捗状況については、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に行ったTrudinger-Moser不等式に関連する変分問題の研究に関して、ある一つの結果を得ることができたため、より一般的な結果を導出する研究を行う。Trudinger-Moser型汎関数の集中現象のみに焦点を当てた最良の形は、近年の研究によって具体的に分かっているため、コンパクト項との関係性をより厳密に調べていく。この研究を行うことにより非コンパクト性のメカニズムの一端を明らかにできると考える。 Hardy-Sobolev不等式に関連する変分問題における3次元問題については、次元による本質的な影響を明らかにすることを試みる。まずは最良定数の達成可能性を明らかにし、その後その本質を解明することを試みる。非線形楕円型方程式に関しては、Hardy項、Hardy-Sobolev項が付加された非線形楕円型方程式の可解性、解の定性的研究を引き続き行う。この問題に関しては、特にHardy項が2つ付加された場合の研究を行う。方程式の可解性に関して、Hardy項が2つ付加された場合は1つの場合と比べ、より状況が複雑になっていることが予想される。また、方程式内の非線形項が領域に関して軸対称な場合、その解は軸対称となるか、という問題も考察する。加えて、解の個数や最大点の位置などの研究も行う。
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