研究課題
現在までに中高齢者の有酸素性トレーニングにより血中adropin濃度が増大し、その増大は動脈硬化度の低下や血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の血中濃度の増大と関連があることを明らかにした。しかしながら、有酸素性トレーニングによるNO産生の増加に関与するペプチド・ホルモンはadropin以外にも報告されており、そのような既存のNO産生調節物質(apelin・ADMA)よりもadropinの貢献度が高いか否かは明らかでない。そこで本研究では、有酸素性トレーニングによるNO産生の増大に対するadropinの貢献度を明らかにすることを目的とした。健常な中高齢者17名を対象に自転車エルゴメータを用いて、1日45分、週に3回、60-70%最高酸素摂取量強度の有酸素性トレーニングを8週間実施し、トレーニング終了前後に動脈硬化度の指標である頸動脈大腿動脈間脈波伝播速度(cfPWV)の測定および採血を実施し、血中NO濃度、adropin濃度、apelin濃度、ADMA濃度を測定した。その結果、有酸素性トレーニング前後に、cfPWV、血中NO濃度、adropin濃度、apelin濃度、ADMA濃度は有意に変化した。また、有酸素性トレーニングによる血中NO濃度の増加と血中adropin濃度、apelin濃度、ADMA濃度の変動はそれぞれ有意に相関関係が認められた。さらに、有酸素性トレーニング前後の血中NO濃度の変化量に対して血中adropin濃度、apelin濃度、ADMA濃度の変動を重回帰分析にて検討した結果、有意に関連性が認められ、それぞれの標準回帰係数(貢献度)はadropinが最も高値を示した。そのため、単相関分析による相関係数や重回帰分析による標準回帰係数の結果から、有酸素性トレーニングによるNO産生の増大に最も貢献度が高いNO産生調節物質はadropinである可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通り、おおむね達成できていると考えられる。有酸素性トレーニングによる一酸化窒素(NO)産生の増大に対して、既に報告されているNO産生調節物質と比較してadropinの貢献がどれだけ高いかを明確化した。
本研究成果から、有酸素性トレーニングに一酸化窒素(NO)産生の増加にはadropinの増大が重要であることを報告した。しかしながら、有酸素性トレーニングによって増加するadropinの血中濃度は、生体内のどの組織の分泌増大を反映しているかは明らかでないため、今後はメカニズムの一部解明として分泌組織の同定を行う必要がある。
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