本年度はSimons Observatory(SO)実験での初観測を目指して、3台設置する望遠鏡のうち、2、3台目の望遠鏡の部品製造をおこなった。本研究者はその中でも電波吸収体といって、望遠鏡の内壁に搭載し望遠鏡外部から入ってくる余分な光を吸収する素子を作製した。これは地上放射からくるノイズを落とし、望遠鏡のノイズレベルを決めるのに非常に重要である。 2、3台目の内壁の広い面積をカバーするために、大量生産体制を整える必要があったが、作成手順をマニュアル化して複数人体制で、適切にスケジュール管理をすることで必要な量の作製を達成した。また、電波吸収体に関しては今回作製したものの性能で満足せず、さらに吸収能力の高い電波吸収体が作製できないかと考え、素材の最適化をおこなった。従来まで使っていた素材を変更し、これまでより特に低周波(~50GHz)で 1桁以上反射率が低い電波吸収体を開発できた。 ワイヤーを用いた望遠鏡の偏光角度応答性の較正にも取り組んだ。SO 実験では、来年度の望遠鏡の設置に向けて較正装置の製造に取りかかっている。この較正装置ではワイヤーの方向を変えるモーターやその位置を読み取るエンコーダ、較正時と宇宙観測時で較正装置自体を移動するための電動アクチュエータなど多岐にわたる電動デバイスが組み込まれており、それらを統合的に制御する電子機器が必要になる。本年度はその電子機器をまとめたエレクトロニクスボックスの開発に注力し、設計・開発を完了した。 現在動いているSimons Array実験でもワイヤーを用いた較正をおこなっており、年度末に望遠鏡が安定してデータが取れるようになったので、1年目に開発したワイヤー較正装置を用いてデータを取得した。データを取得したのが年度末間際だったために、検出器の評価までは進められなかったものの、今後このデータの解析をして角度較正をおこないたい。
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