志村曲線やモジュラー曲線の CM 点などに付随する特別な代数的サイクルについての数論幾何的な研究を行った。特に、それらを用いて、素数 p が惰性する虚二次体でCMをもつ楕円曲線に対する反円分拡大の岩澤理論に関する共同研究を行った(九州大学の小林真一氏とカリフォルニア工科大学の Ashay Burungale 氏との共同研究)。 素数 p が分裂する場合の CM 楕円曲線の岩澤理論は、ordinary 表現 (あるいはより一般にPanchishkin 表現)という場合の岩澤理論に該当し、さまざまな先行研究がなされており、一般的な予想が部分的に定式化されるなど理解が進んでいる。しかしながら、p が惰性する場合は全く異なる現象が起き、ordinary 表現の場合の岩澤理論の枠組みでは捉えきれないだけでなく、整数性の崩れなどの多くの困難が現れる。より一般的な設定での岩澤理論的現象を理解するために、惰性的素数に対するCM楕円曲線の場合を最初のステップとして研究することは非常に重要であると考える。 本年度は、惰性的素数におけるCM 楕円曲線の反円分岩澤理論の先駆的研究を行った Rubin が予見していたある種の局所単数群の構造定理を証明することに成功した。これの一つの応用として、Agboola-Howard が仮定付きで証明した岩澤主予想の仮定が必要なくなった。 また、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で行われている Seminar on Geometry and Arithmetic で、本年度得られた成果について講演した(オンラインでの講演)。
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