研究課題/領域番号 |
18J01312
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
山口 一大 法政大学, 現代福祉学部臨床心理学科, 特別研究員(PD) (50826675)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | 認知診断モデル / ベイズ推定 / 変分ベイズ法 / アルゴリズム開発 |
研究実績の概要 |
本年度は,初年度に行った研究を学会誌にて発表し,その内容を発展させた研究を行った。具体的には一般的な認知診断モデルであるgeneralized DINAモデルやlog linear cognitive diagnosticモデルといった飽和モデルに対する変分推論(variational Bayesian inference; VB法)と事後確率最大化法(maximum a posteriori estimation; MAP法)の開発を行った。昨年度の研究と同様に,飽和モデルの定式化を有限混合モデルに変換し,VB法の導出を行った。シミュレーションによりパラメタの真値が復元可能であることや,実データにおけるマルコフ連鎖モンテカルロ法との比較により,MCMC法に類似したパラメタ推定値が得られることが確認された。さらに,本年度からアイオワ大学のJonathan Templin教授との共同研究を開始した。Templin教授との共同研究により,認知診断モデルにおいて重要であるパラメタの単調制約を考慮した飽和モデルに対するGibbsサンプリングアルゴリズムの導出に成功し,バイアスのない推定値が得られること,またMCMCの収束が十分に高速であることを確認した。また,認知診断モデルであまり考慮されてこなかった信頼性の指標を新たに提案した。この信頼性は観測得点に基づくものであり,解釈や計算が容易であることが特徴である。信頼性の研究については当初の研究で想定したものではないが,最終的に妥当な診断結果を得るために重要であると判断したため,本年度に実行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,初年度2年目に理論的な研究を行う予定であったが,効率的なパラメタ推定アルゴリズムの開発やモデル開発が予定通り進行し,学会誌への掲載も完了している。また,2年目に始めたベイズ推定法の開発についても,当初考慮していなかった重要な仮定を満足する推定方法の開発ができている。この研究成果は,アイオワ大学のJonathan Templin教授との共同研究の成果であり,教授とはさらに信頼性の指標の開発も行っている。これらの研究はすでに学会誌に投稿をし,査読を受けている。初年度の研究成果を発展させた変分ベイズ推論法も一般的なモデルに拡張ができ,この成果も学会誌に投稿し,査読を受けている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては,信頼性の指標の拡張およびこれまでに得られた推定方法について,Templin教授との共同研究を行い,より詳細に数理的な性質を調査することを目指す。これらは当初の予定とは異なったものであるが,認知診断モデルにおけるパラメタ推定がどのような場合に信頼できるのか,また,信頼できないのかを明らかにする必要性があると考えられる。こうした推定方法の性質は,実データ解析に先立って行われる必要があり,優先的に検討を行う必要があると判断された。これらに加えて,理論研究で不十分であった段階推定の影響の検討やモデル選択とパラメタ推定を同時に実効する方法を提案することを目指す。
|