温位面での質量重み付き時間平均法(T-MIM)に基づくエネルギー収支の定式化を考察した。時間平均場について、そこから更に東西平均場と東西平均からの偏差に分けて定式化を進めた。それにより、東西平均場、停滞性波動、非停滞性波動の3者の間のエネルギー変換を記述することとなった。東西平均場と非停滞性波動成分は位相依存性を持たないが、停滞性波動成分については位相依存性がある。エネルギー収支を精度よく解析するツールの開発を進めている。 T-MIMにおけるエネルギー収支の結果と比較をするために、温位面での質量重み付き東西平均法(Z-MIM)に基づくエネルギーサイクルを研究した。CMIP5から5つの気候モデルの結果を用いて、地球温暖化が21世紀末におけるエネルギー収支にどのように影響を与えるのかを明らかにした。東西平均の運動エネルギーと有効位置エネルギーは、12月から2月の有効位置エネルギーの除き、21世紀末には現在気候に比べて増加する。一方、波動エネルギーは将来弱化する。波動エネルギーの収支は、力学変換による流入が将来弱化し、非断熱加熱に伴う生成が将来増加する。研究成果の論文化を進めている。 Z-MIMに基づくエネルギーサイクルの季節変化について解析を行った。夏半球と冬半球に分けて解析すると、エネルギーは冬に大きな値となり、夏に小さい値となる。北半球と南半球を比べると、北半球の方が季節変化の振幅が大きい。定常成分を見ると非断熱加熱に伴う波動エネルギーの生成が夏季と冬季で符号が異なることが明らかとなった。
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