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2018 年度 実績報告書

再生治療への応用を目指したCD163陽性マクロファージの組織修復能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18J01441
研究機関京都大学

研究代表者

西東 洋一  京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2021-03-31
キーワードマクロファージ / フィブリン / 生体材料 / ハイドロゲル / 創傷治癒 / 再生医療
研究実績の概要

フィブリンハイドロゲルの作製とマクロファージに対する機能解析:ハイドロゲルとして既存のゼラチンと新規にフィブリンを準備しハイドロゲルを作製し、マクロファージに与える作用をマウスin vitro, in vivo及びヒト in vitroで解析した。マウスへの植込実験によって、既存のゼラチンハイドロゲルと比較検討を行なったところ、マクロファージのハイドロゲル内浸潤数、M2活性化能のいずれもフィブリンが有意に高いうえ、ゼラチン同様に植込み後数週間で生体吸収されることがわかった。さらに、M2マーカー(CD163, CD204, CD206)の発現を免疫染色で確認したところ、CD204, CD206発現がフィブリンにおいて有意に高かった。以上からフィブリンハイドロゲルがマクロファージの動員とM2活性化において優れた生体材料であることを確認できた。フィブリンハイドロゲル内へのマクロファージ浸潤数をさらに増加させることを目的として、単球遊走能を有するSEW2871(5-[4-phenyl-5-(trifluoromethyl)-2-thienyl]-3-[3-(trifluoromethyl)phenyl]-1,2,4-oxadiazole)のミセル化徐放を検討したが、マウスin vivoでの徐放化には至らなかったため、今後はSEW2871のミセル化は導入しない方針とした。本解析結果は論文発表することができた。(Tanaka R, Saito Y, Fujiwara Y, Jo JI, Tabata Y. Preparation of fibrin hydrogels to promote the recruitment of anti-inflammatory macrophages. Acta Biomater, in press.)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒトマクロファージの研究室内実用化に向け事務的・技術的環境整備を行い、倫理審査向けの研究計画書を作成・申請し、研究室内の学生・研究者にヒトマクロファージがいつでも活用できる環境を樹立した。また、ヒトとマウスのマクロファージの使い分けや病理組織学的解析についての基礎的知識の教育を行い、病理学的解析手法の解決策を提示できたことで、所属研究室の解析手法のレベルアップに貢献した。
具体的な研究解析では、フィブリンハイドロゲルのマクロファージに与える作用についての生物学・医学的解析を精力的に行なったことで、当該年度内にActa Biomaterialia誌での論文化に繋がった(Tanaka R, Saito Y, Fujiwara Y, Jo JI, Tabata Y. Preparation of fibrin hydrogels to promote the recruitment of anti-inflammatory macrophages. Acta Biomater, in press.)。当初、マクロファージをハイドロゲル内に動員するための薬剤徐放化が必須と考え、単球遊走作用のあるSEW2871の徐放化を目指したが結果的にはin vitroでの徐放化に成功したものの、in vivoでの徐放化には至らなかった。しかしながら、フィブリンハイドロゲルそのものにマクロファージを動員する能力を有していることが分かり、結果的にSEW2871の徐放化を必要としなかったことは当初予期していない良い結果であった。
その他の解析として、CD163が組織在住マクロファージマーカーでることを示唆するような解析結果や、徐放化薬剤の候補となる可能性のある天然化合物のスクリーニングも進展しており、全体として研究計画が概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今後は完全なヒト材料によるフィブリンハイドロゲルの作製を目指し、同様の機能を有していることを確認する。また、CD163が組織在住マクロファージのマーカーとしての有用性を確認する解析を進展させる。
1. ヒト由来材料を用いたフィブリンハイドロゲルの作製:前年度にウシフィブリノゲン-トロンビンを用いたフィブリンハイドロゲルの作成を行い、マウス・ヒトにおいてマクロファージ遊走能とM2活性化能を保持していることを確認した。本年度は材料をヒトに置き換えたフィブリンハイドロゲルを作製し、ヒトマクロファージに対して同様の機能を有していることを確認する。
2. ヒトフィブリンハイドロゲルでの薬剤徐放化の検討:フィブリンハイドロゲルはフィブリン固有の作用によって、マクロファージの遊走・M2分化が可能であることをこれまでの確認した。従って、今年度以降は間葉系幹細胞を効率的に動員する薬剤の徐放化を目指す。作製した徐放化ヒトフィブリンゲルを用いて、マウスでのin vivo及びヒトでのin vitro解析を行い、徐放化の判定を行う。
3. マウス胎児期におけるCD163陽性マクロファージの分布解析:これまでの成体マウスによる解析により、単球由来マクロファージがCD163を発現しないことを裏付ける結果を複数得た。また、胎児マウス(E12d)において、全身に分布するマクロファージがほとんどCD163を発現していない状況下で卵黄嚢内のマクロファージがCD163を発現していることを免疫染色を用いて確認した。現在、胎児期の詳細なマクロファージCD1 63発現の分布を解析するため、熊本大学の動物資源センターにおいてCD163-LacZマウスの作製を開始している。本年度は、各胎児期のマウスに βgal染色を行うことでCD163が卵黄嚢内のマクロファージに発現し、全身へ分布していく継時的変化を確認することを目指す。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Preparation of fibrin hydrogels to promote the recruitment of anti-inflammatory macrophages2019

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Ryusuke、Saito Yoichi、Fujiwara Yukio、Jo Jun-ichiro、Tabata Yasuhiko
    • 雑誌名

      Acta Biomaterialia

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1016/j.actbio.2019.03.011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] CD163 is required for protumoral activation of macrophages in human and murine sarcoma2018

    • 著者名/発表者名
      Shiraishi Daisuke、Fujiwara Yukio、Horlad Hasita、Saito Yoichi、Iriki Toyohisa、Tsuboki Junko、Cheng Pan、Nakagata Naomi、Mizuta Hiroshi、Bekki Hirofumi、Nakashima Yasuharu、Oda Yoshinao、Takeya Motohiro、Komohara Yoshihiro
    • 雑誌名

      Cancer Research

      巻: 78 ページ: 3255~3266

    • DOI

      10.1158/0008-5472.CAN-17-2011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Natural compounds that regulate lymph node sinus macrophages: Inducing an anti-tumor effect by regulating macrophage activation2018

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara Yukio、Saito Yoichi、Shiota Takuya、Cheng Pan、Ikeda Tsuyoshi、Ohnishi Koji、Takeya Motohiro、Komohara Yoshihiro
    • 雑誌名

      Journal of Clinical and Experimental Hematopathology

      巻: 58 ページ: 17~23

    • DOI

      10.3960/jslrt.17032

    • 査読あり
  • [学会発表] 再生医療への応用を目指した医用材料「フィブリンハイドロゲル」に対するマクロファージの反応性解析2018

    • 著者名/発表者名
      西東洋一
    • 学会等名
      第107回 日本病理学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] かさぶたとマクロファージで再生医療2018

    • 著者名/発表者名
      西東洋一
    • 学会等名
      京都大学アカデミックデイ2018

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公開日: 2019-12-27  

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