LPSに対するCD163の抗炎症効果の検討:LPS環境でのマクロファージの解析を行なった。敗血症時のヒトの臓器ではマクロファージのCD163発現が高いことが分かった。次に、マウス腹腔マクロファージはLPSで刺激することでCD163の発現が上昇し、LPSの全身投与によって脾臓マクロファージのCD163発現が増強した。WT/CD163KOマウスにLPSの全身投与を行ったところ、WTマウスで有意に生存率が高かった。以上から、CD163はLPS暴露環境における炎症に対して、抗炎症的に作用していることが示唆された。これにより、組織再生を促進するためにCD163陽性マクロファージを効率的に導入する戦略がメインテーマであるフィブリンゲルでも妥当であることが確認できた。 組織在住マクロファージマーカーとしてのCD163:胎児マウスの解析で、卵黄嚢由来マクロファージのうちFetal liver macrophageと呼ばれるマクロファージ郡がCD163陽性であり、それらが組織在住マクロファージとして全身に分布するという生活史が見えてきた。Fetal liver macrophageでのみCD163が発現するというマウス型の表現系と、由来によらずCD163を様々な程度に発現するヒト型が、他の動物種を解析したところ、齧歯目ではラット(ネズミ亜目)がマウス型ということが分かった。モルモットとハダカデバネズミ(いずれもヤマアラシ亜目)はCD163陽性組織在住マクロファージを組織標本レベルで確認することができたが、ネズミ亜目と比較して明らかに陽性細胞数が少ないことが分かった。ウシ・ブタ・ヤギ(鯨偶蹄目)では末梢血から単球由来マクロファージの分化培養し、ヒト型のCD163発現であることが分かった。以上から、マウス型のCD163発現が齧歯目特有のものである可能性が強く示唆された。
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