| 研究課題/領域番号 |
18J01459
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| 研究機関 | 広島大学 |
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研究代表者 |
山本 恵 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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| キーワード | フレーバー物理 / 素粒子標準模型を超える新物理 |
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| 研究実績の概要 |
本研究の目的は、精密測定が進むフレーバー物理現象を通し、素粒子標準模型を超える新物理の姿を見出すことである。本年度は、標準模型からのずれが報告されているB中間子とK中間子の崩壊現象に注目し、それらのずれを説明できる新物理のモデルを検討し、将来実験での検証可能性を調べた。特に、LHC実験をはじめとする新物理探索が盛んに行われているヨーロッパに長期滞在することで、最新の実験結果と議論の動向を積極的に取り入れた研究を行うことができた。
現在、B中間子の精密測定実験から、3σ 程度の標準模型からのずれ(アノマリー)が様々な崩壊モードで報告されている。たとえば、lepton universality のチェックとなる物理量: B → Kμμ 崩壊と B → Kee 崩壊の崩壊分岐比の比 R(K) は、標準模型では良い精度で 1 になるが、LHCb, Belle, BaBar実験における結果はそれより低い値を出している。また、K中間子の直接的CP非対称度において、格子QCDの計算を取り入れた標準模型の予言値と実験値との間に、ずれがあることも報告されている。現在のところ、それらのずれは有意ではないものの、新物理の兆候が見え始めている可能性がある。
このような状況の中、これらの標準模型からのずれを説明できる新物理のモデルに注目し、その効果が他の観測量に与えうる影響や相関を明らかにすることで、種々のモデルの峻別可能性を議論した。これらの結果は、新物理に対する制限を与え、また将来実験の指針にインパクトを与えうることが期待される。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精密測定が進むフレーバー物理現象を通し、素粒子標準模型を超える新物理の姿を見出すことを目的に、本年度は、標準模型からのずれが報告されているB中間子とK中間子の崩壊現象に注目し、それらのずれを説明できる新物理のモデルを検討した。これらの物理量は、Belle II実験やLHCb実験の第二期運転でより高精度で測定されることが期待され、将来モデルの峻別が可能になるこが期待される。ここで取り組んだことは、新物理に対する制限を与え、また将来実験の指針にインパクトを与えうることが期待されるため、新物理の発見やモデルの制限に関して身を結ぶことが十分に期待できる。
また、現在報告されている標準模型からのずれが新物理の影響によるものならば、他の物理量にも影響が現れ、相関を持つことが予想される。その中でも、新物理への感度が高いことが知られているK中間子崩壊現象への影響を、U(2)フレーバー対称性の枠組みで包括的に調査中であり、これを明らかにすることを当面の目標とし研究を継続している。
以上により、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まずBelle II, LHCbから報告される最新のデータを解析に取り込み、1 年目の検討をより詳細なものにする。また、実験的進歩が見込まれる、レプトン崩壊や終状態運動量依存性は強い相関を持ち、モデルを判別しうる物理量となるため、これらの相関を各モデルで計算し、模型の峻別可能性を議論する。 具体的には以下のような内容に取り組む 。
1 B → πτν崩壊は、標準模型からずれが報告されているB → D*τν崩壊と似た過程で生じるため、フレーバー対称性を持つ新物理において 特徴的な相関が現れることが期待される。また、Belle II実験で測定されることが期待されている。B → D*τνにおけるずれを説明できる新物理において、B → πτν崩壊との相関を明らかにすることで、Belle II実験での可能性を示す。
2 現在、フレーバー物理現象において報告されている標準模型からのずれは、lepton universalityの破れを示唆しており、これはミューオン の異常磁気能率(g-2) とも相関を持つことが予想される。標準模型からのずれが報告されている B→K(*) mu mu、B → D*τν、(g-2)が説明できる新物理を導入し、その相関を明らかにすることで、将来実験への感度を明らかにする。
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