研究課題/領域番号 |
18J01498
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
渡邊 千尋 学習院大学, 文学部史学科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 日本近代史 / 対中経済進出 / 中国「本部」 / 生産拠点の移動 / 中国の不平等条約改正 / 租界 / 居留地 / 開放地 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1925年に始まる中国の不平等条約改正要求に対する日本側の交渉姿勢を、中国「本部」における日本人の経済活動の実態を踏まえて解明することである。特に工場経営の本格化という第一次大戦を契機とする日本人の経済活動の変化が、既存の通商条約に基づく租界・開放地制度との間に齟齬をもたらし、このことが中国との不平等条約改正交渉に臨む日本政府の姿勢に影響を与えたという視点から、揚子江中下流域および山東省における実態の解明と、その外交方針への反映の過程を明らかにしようとしている。 このうち、本年度は①揚子江中下流域における実態の解明、②実態の外交方針への反映の過程について史料調査および分析を行った。①については研究実施計画では揚子江下流域の上海と中流域の漢口を分析対象とする予定であったが、上海市档案館および台湾の中央研究院近代史研究所档案館・国史館の史料調査の結果、上海に関して予想以上に多くの史料が見つかったため、分析対象を上海に絞った。その経過報告として、2018年10月に武漢で開催された「区域視野下的近代中外関係」国際学術研討会をはじめとする中国の学会において数回の学会報告を行った。本研究は日本史つまり対中進出を行った列強本国の視点からの租界研究であることから新たな視点と評価され、日本史の研究成果を海外において発信・交流する意義を感じることができた。 ②については2018年6月の東アジア近代史学会大会にて報告を行ったところ、本報告で扱う中国「本部」と「満洲」における実態を比較するコメントをいただき、1920年代以降の日本の対中経済進出政策を、両地域への進出をめぐるせめぎ合いとして理解することの意義を改めて確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料の現存状況から当初の研究計画に多少変更を加えたが、おおむね計画通りの研究成果を上げることができた。今年度提出した雑誌論文は修正に時間がかかり、発表が次年度に持ち越しとなったが、近々再提出する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、中国における日本人居留民の経済活動の実態が1925~1926年の北京関税特別会議・法権委員会にのぞむ日本政府の一般方針にどのように反映されたかについて、2018年度の成果をまとめて論文として投稿する。第二に、引続き上海における実態の解明を行う。これについては台湾の中央研究院近代史研究所および国史館の所蔵史料の調査を行うとともに、南京の第二歴史档案館において史料調査を行い、その結果を見て必要に応じてイギリスのナショナルアーカイブズでの調査を行う。第三に、武漢市および湖北省档案館、青島档案館の史料調査を行い、史料の閲覧可能状況および現存状況を見たうえで、武漢か青島・済南における実態の解明に着手する。
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