研究課題/領域番号 |
18J01600
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
後藤 規弘 滋賀医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | Dclk1 / 癌幹細胞 |
研究実績の概要 |
DCLK1はマウス腸腫瘍幹細胞に特異的に発現するマーカーであるが、ヒト大腸癌における役割は十分に解明されていない。申請者はマウス、ヒトの双方でDCLK1陽性細胞に特異的に発現する細胞表面マーカーを同定しており、これらのマーカーを用いて、ヒト大腸癌での癌幹細胞性の検証を行い、新たな大腸癌幹細胞治療法開発につなげることを目標としている。まず、ヒト大腸癌オルガノイドに対して、CRISPR-Cas9でDCLK1陽性細胞表面マーカー遺伝子の終止コドン直前に2A-CreERT2をノックインした後、CMV-loxp-DsRed-loxp-EGFPベクターをレンチウイルスにて導入した。この大腸癌オルガノイドを免疫不全マウスの皮下に移植し腫瘍が形成されたのちにlineage tracingを行った。すると、GFP陽性細胞は自己複製と子孫細胞の供給を行い、14日後には腫瘍細胞の多くがGFP陽性細胞で占められるようになった。これらの結果から、DCLK1陽性細胞特異的細胞表面マーカーはヒト大腸癌においても癌幹細胞をマークすることが示された。次に、DCLK1陽性細胞特異的細胞表面マーカー陽性細胞を標的とした治療の効果を評価するために、CMV-loxp-DsRed-loxp-iCaspase9-2A-EGFPベクターを作成し、レンチウイルスを用いて前述のDCLK1陽性細胞表面マーカー遺伝子の終止コドン直前に2A-CreERT2をノックインしたオルガノイドに導入した。この遺伝子改変後のオルガノイドを免疫不全マウスの皮下に移植し、タモキシフェンとDimerizerを投与してDCLK1陽性細胞特異的細胞表面マーカー陽性細胞を長期的にアブレーションすると、強力な腫瘍増殖抑制効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集を行った大腸癌オルガノイドを樹立することで、ヒト大腸癌でlineage tracing実験、ablation実験を行うことが可能になった。これらの実験により、DCLK1陽性細胞特異的細胞表面マーカー陽性細胞はヒト大腸癌幹細胞をマークすることが示され、この細胞を標的とすることで大腸癌の増殖抑制効果が得られることもわかった。今後の新規大腸癌治療開発に向けた基礎的なデータが得られたと思われ、おおむね順調に進展したと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度は、遺伝子改変ヒト大腸癌オルガノイドを免疫不全マウスの皮下へ移植し、DCLK1陽性細胞特異的細胞表面マーカー陽性細胞を特異的にアブレーションすると、腫瘍増殖抑制効果が見られることを確認した。今後は、遺伝子改変ヒト大腸癌オルガノイドを免疫不全マウスの直腸に同所移植し、原発巣においてもDCLK1陽性細胞特異的細胞表面マーカー陽性細胞を特異的にアブレーションすることで、同様の腫瘍退縮効果が得られるかどうか検証する。また、これらの実験で腫瘍退縮効果が見られるようであれば、DCLK1陽性細胞表面マーカーのモノクローナル抗体の作製にとりかかる。具体的には、目的のマーカーの細胞外ドメインのリコンビナントタンパクを作製し、これを免疫したマウスの脾臓細胞とミエローマ細胞を融合させたハイブリドーマを作製してクローン化する。抗原に親和性の高いクローンを選別し、得られた複数のハイブリドーマ・クローンから、モノクローナル抗体を作製する。可能であれば、これらの抗体のFc領域に殺細胞薬を結合させたキラー抗体の作製も試みる。
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