研究課題
本研究では、層状複合アニオン化合物の室温励起子発光を利用することで、超高速応答を示すシンチレータ材料の開発を行った。近年の短パルスの大型レーザーの開発に伴い、レーザー核融合研究ではナノ秒以下の時間分解能を持つ計測手法の開発が求められている。半導体励起子発光は非常に早い発光寿命を持つが、その微弱な結合エネルギーのため極低温下でしか発光しないことが実用に向けた際の問題として挙げられる。そこで、低次元構造による量子閉じ込め効果を利用し、室温下でも発光が発言する新物質の開発を行った。昨年度までの結果において、層状構造を持ち、量子井戸構造となりうる電子構造を持つ複数の新物質を、計算科学を用いてデザインし実際に合成することに成功した。本年度は物質中の酸化物絶縁体層の発光特性への影響の評価を行った。異なる絶縁体層を持つ層状化合物を数種類用意し、これらのバンドギャップエネルギーを測定した。この結果、酸化物絶縁体層の厚みが増加するにつれ、吸収端およびバンドギャップエネルギーが増大していることがみられた。これは半導体層間の距離が離れることで、量子閉じ込め性が増大したことに起因すると考えられる。これらの物質はいずれも数10ピコ秒の発光寿命を持つことが分かった。放射線による発光特性評価を行ったところ、α線源の励起によって発光の信号を確認した。ただし、室温下での信号量は比較として計測した酸化亜鉛に比べ100分の1と小さいことが今後の課題である。また、検出器応用に向けた透明媒体化のために、結晶育成手法を試みた。固相反応法で得られた平板状の粒を種結晶に、固相反応を繰り返すだけでサブミリクラスの平板結晶を得ることに成功した。育成条件を最適化することによって数ミリ程度の結晶を育成することが期待できる。以上より、層状複合アニオン化合物がシンチレータ材料としてのポテンシャルを有することを示した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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