研究実績の概要 |
エボラウイルスの複製機構を微細構造から解明するために、二つの研究の柱を準備した。一つ目は、エボラウイルスの転写促進因子であるウイルスタンパク質VP30のリン酸化に注目して転写・複製制御機構を解明することであり、二つ目は、転写・複製の鋳型となるヌクレオカプシドの形成機構と輸送過程を微細構造から解明することであった。一つ目の研究課題について、本研究でエボラウイルスの増殖におけるVP30をリン酸化するキナーゼを同定し、新しい抗ウイルス薬開発の基盤を構築することができた (Takamatsu, et al. mBio. 2020)。二つ目の研究課題については、前駆研究で構築したエボラウイルスの非感染性ライブセルイメージングシステムを応用し、ヌクレオカプシド様構造の輸送を担うウイルスタンパク質のドメインを同定し、輸送に関わる宿主因子を同定する基盤を構築した (Takamatsu, et al. J.Virol. 2020)。さらに他の高病原性ウイルスに、このシステムを応用し、マールブルグウイルスとラッサウイルスのウイルスタンパク質複合体の輸送経路を解明する非感染性ライブセルイメージングシステムを構築した(Takamatsu, et al. Virol. J. 2019, Takamatsu, et al. Microscopy. 2019)。以上のように複数の国際誌に報告できるようなデータを得たと共に、今後の研究課題である細胞内の移動経路の全体像を視覚化する準備を整えることができた。こうした研究成果・研究姿勢が評価され、採用期間の中途ではあったが、国立感染症研究所の高病原性ウイルス研究部門の主任研究官(任期なし)に抜擢して頂いた。新天地においても、本研究計画で構築した病原体の宿主細胞内での挙動を視覚化するライブイメージングシステムを発展させたいと考えている。
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