研究課題/領域番号 |
18J01678
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
齊木 愛希子 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | セロトニン |
研究実績の概要 |
セロトニンは報酬や罰、期待、情動や睡眠覚醒、運動など多岐にわたる機能を担うものの、動物の行動制御における役割には不明な点が多い。この問題に取り組むため、大脳皮質の運動制御における役割に注目し、セロトニン神経系の遺伝子操作を可能にする遺伝子改変系統を作成するとともに、セロトニン操作の結果を検証するのに必須となる運動量の定量化評価系の開発に取り組んだ。今年度は、投射先を同定したセロトニン応答性神経細胞の活動がどのような性質を持つのか判別するため、光遺伝学を用いた脳活動の抑制実験と筋電位の定量評価を行う新たな実験系を構築した。 頭部固定下のマウスにホイールを用いた前肢運動を行わせ、さらに光提示に合わせて運動開始と繰り返し運動中の両方を再現良く数百試行行わせる新規課題を設定した。訓練を行った約半数のマウスが約4週間でこの課題を学習した。さらに運動中マウスの前肢4カ所の筋肉(二頭筋、三頭筋、長橈側手根伸筋、長掌筋)から筋電図を測定し、前肢運動中に屈筋と伸筋が交互に収縮していることを確認した。その後、課題と脳活動の関連を確かめるため、抑制性神経細胞にのみ光感受性タンパク質チャネルロドプシンを発現するマウス系統を用い、運動開始時に光照射し抑制性神経細胞を活性化させることで、非照射時の筋電図と明確な違いが現れることを確認した。 今後は大脳皮質神経細胞のセロトニン応答性を神経細胞の投射先別に比較検討する実験を行い、構築した実験系を用いて、セロトニン応答性の違いと運動中の活動を比較検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
セロトニン神経系の遺伝子操作を可能にする遺伝子改変系統を作成するとともに、セロトニン操作の結果を検証するのに必須となる運動量の定量的評価系の開発に成功した。しかし、当初予定していた神経細胞のセロトニン応答性を神経細胞の投射先別に比較検討する実験は、使用を予定していた神経プローブ入手の遅延により行えていないため、次年度行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
セロトニン操作の結果を検証するのに必須となる運動量の定量的評価系の開発に成功したものの、訓練期間が長く学習効率が低いため、実験の効率を上げるためにもさらなる改良を加える予定である。また、確立した同評価系を基盤として大脳皮質神経細胞のセロトニン応答性を投射先別に比較検討する予定である。
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