研究課題/領域番号 |
18J01761
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
村田 浩太郎 東京学芸大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 微生物 / 氷晶核 |
研究実績の概要 |
本年度は極地に生息する氷核活性微生物の探索を行うための準備として、主に以下の3点に取り組んだ。 (1)微生物培養設備の構築:微生物実験の開始にあたり、基本的な培養設備を導入した。将来的に海外試料由来の微生物取り扱いの可能性も考慮し、検疫所と相談した上で設備を揃えることができた。クリーンベンチやオートクレーブ、低温での培養が可能なクールインキュベーター2台を導入し、真正細菌と菌類用の培地を選定した。 (2)氷核活性試験のための液滴凍結実験装置の組み立て:培養微生物の凍結核としての能力を評価するための実験を行うため、アメリカ大気海洋庁(NOAA)の研究者の協力によって氷晶核計測装置の構築・導入を行った。生物氷晶核の有無を評価するスクリーニング試験として使用を開始した。これにより、氷核活性微生物を効率的に検出することが可能となった。 (3)富士山頂における極地微生物観測の実施:標高の高い山岳域の大気中微生物は極地環境に類似した条件下で存在するため、極地の微生物観測探索に取りかかるにあたって試験的な取り組みや観測を行うのに適したフィールドである。そこで、極域微生物を用いた実験に先立って富士山頂での微生物観測に着手し、富士山頂の大気(すなわち、基本的に自由対流圏)に存在する氷核活性微生物の試験的探索を試みた。富士山頂で採取した浮遊粒子から細菌は培養できなかったが、カビ(菌類)と思われるものが2種類見つかった。ただし、作製した氷晶核計測装置で測定したところ、生物氷晶核としてのはたらきはないことがわかった。一方で、大気中浮遊粒子に含まれていた細菌DNAの解析をおこない、氷核活性を持つ細菌属の割合を明らかにすることができた。このような観測事例はまだ他の山岳地域でもきわめて少ないことから、次年度以降も継続することにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のうちに微生物実験設備と氷晶核計測装置を新規導入することができ、富士山でのテスト観測からは予想以上の結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度作製した氷晶核計のテストも兼ねて富士山頂での氷核活性微生物の探索を行いつつ、極地由来微生物の氷核活性に関する室内実験を開始する。具体的には、氷晶核計について機械的なブラッシュアップを行い、計測値のばらつきなどを定量化する。これを用いて、フィールドで得られたエアロゾル粒子試料や微生物培養株の氷核活性を計測する。また、極地微生物として、北極をはじめとする寒帯域から分離培養された微生物を取り寄せることにくわえ、富士山頂で得られた微生物株も使用し、異なる生息域や培養条件下での氷核活性の有無について評価する。これにより、極地に生息している高い氷核活性を持つ微生物の探索を行う。
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