研究課題/領域番号 |
18J01772
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 和志 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 生物発光 / POCT / ウィルス / CRISPR / ゲノム編集 / BRET / DNA |
研究実績の概要 |
新興ウイルスに対する精密・迅速・簡易な分子診断ツールが無かったために、新興ウイルス感染症が始まる度に、公衆衛生対応が遅れをとって、パンデミックに至ってきた。それを解決するために、ゲノム編集技術として汎用されているCRISPR-Cas9と生物発光タンパク質を組み合わせることで、精密・迅速・簡易な分子診断ツールの開発を目指す。
平成30年度において、多種多様な塩基配列をもつDNAの存在を生物発光シグナルへと変換するセンサーの開発を試み、特異なDNase活性を有するCasタンパク質と修飾核酸に基づくセンサーの開発に成功した。しかし、本センサーが感染初期の微量ウィルス由来DNAを検出するほどの感度を有しているか、また唾液や血液中などの雑多な環境下で検出可能であるかは、不明であった。 まず、本年度は開発したセンサーの検出限界の調査を行い、開発した生物発光DNAセンサーと等温核酸増幅技術を組み合わせることで、ごく微量のウィルスDNA検出が可能であることを見出した。さらに、ウイルス感染者・非感染者由来の培養細胞株抽出液を用いて、雑多な環境下におけるウィルス検出実験を行った。その結果、培養細胞株の抽出液からウィルスの陰性・陽性を、その遺伝子型も含めて検出可能であることを実証した。こうした測定全てを室温で1時間以内に行うことができ、現行の4-6時間の判定時間がかかる定量的PCR法に比べて優位性を有していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本センサー自体の検出限界は数10nM(ナノモラー)であったが、他の等温核酸増幅技術を組み合わせることで、数100 fM(フェムトモラー)のDNA検出が可能であることを実証した。さらに、培養細胞株の抽出物におけるウィルスDNA検出を試み、感染の陰性・陽性を迅速に同定することが可能であった。以上から本センサーを用いて精密・迅速にウィルス診断が可能であることが示されたことから、プロジェクトは順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度までの研究で、開発したセンサーが「その場」ウィルス検出に十分な感度を有していることがわかった。したがって、今後は遠隔地での「その場」計測に適用するためのプラットフォーム構築を行う。具体的には、Casタンパク質・gRNAなどを含んだ検査紙の作成、生物発光画像データから定量的にウィルス濃度を算出する画像処理プログラム開発を行う。また、平成30年度に習得したバイオインフォマティクスの技術を用いて、ウィルスゲノムDNA中で他の種と相同性の低い領域を見つけるプログラム構築を行う。これにより、抗体などの検出手法がない新興ウィルスに対して、迅速な検査手法を提供できると期待される。
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