加齢に伴って様々な疾患を発症するリスクが増大する。心不全や動脈硬化などがそれに当たるが、その発症基盤として慢性的な炎症が関わることが、近年の研究から明らかになっている。炎症システムは免疫細胞を主役とする防御機構として存在するだけでなく、発生や再生といった個体全体の恒常性維持と連動する。なぜ、このシステムが加齢に伴って活性化し、疾患発症に繋がっていくのかは明らかになっていない。 本研究では、炎症誘導の鍵臓器である内臓脂肪に着目し、脂肪を構築する脂肪細胞の源、脂肪幹・前駆細胞の分化が炎症誘導に関わることを基に進めている。すなわち、脂肪幹・前駆細胞が、新たに炎症性細胞へと分化するという仮説の基、検証を進めている。 10x chromiumによるシングルセル解析と、SPADEソフトによる細胞集団のクラスタリングを基に、詳細な新規炎症性細胞の同定を進めたところ、脂肪幹・前駆細胞とは異なるいくつかのマーカー分子の同定に成功した。この細胞集団は、幹細胞マーカーCD34等の発現レベルの低下が見られることからも、分化が進んでいる状態であると考えられる。また、前年度で見出した脂肪前駆細胞を炎症性細胞へと分化させる可能をもつ転写因子が、これらの誘導に関わるデータが分かってきた。現在、PDGFRa-cre-ERT2を用いてlineage traceから、分化がどのタイミングでどの場所に起こるのか、透明化も含め検討を行っている。更には、老化による一連の転写プログラム解明に向けて研究を進めている。
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