研究課題/領域番号 |
18J01780
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
下垣 実央 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / アミン有機触媒 / 不斉反応 / 連続反応 |
研究実績の概要 |
有機分子触媒は、金属に代わる環境調和型の触媒として急速に発展している。巧妙に分子設計されたキラル有機分子触媒を用いて、複雑な天然物や機能性物質の化学選択的および立体選択的合成へも展開されている。この分野は著しい発展を遂げているが、本研究では、不斉合成における有用性のみならず、プロセス的な観点も考慮に入れた反応系の開発を目指した。すなわち、複雑な分子構造の構築を段階的に行うのではなく、複数の触媒をワンポットで用いて連続反応を行うハイブリッド触媒系を検討した。当研究室では、キラル二級アミン触媒を用いたエナミン経由の反応において、アルデヒドのα位の不斉ベンゾイルオキシ化を開発している。また、複数の研究グループによって、キラルアミン触媒を用いたアルデヒドとジヒドロキシアセトンのアルドール反応が報告されている。本研究では、これらの反応をワンポットで連続的に行い、単糖類の立体選択的合成を試みた。まず、前報に従い、キラルトリチルピロリジン触媒存在下、過酸化ベンゾイルを求電子剤に用いて、アルデヒドのα位をエナンチオ選択的にベンゾイルオキシ化した。その反応溶液に水酸基をシリル保護したジヒドロキシアセトンを添加し、L-トレオニンの水酸基をシリル保護したアミノ酸触媒を用いてアルドール反応を行うと、シン選択的に反応が進行し、糖誘導体が形成された。この時、得られた生成物は単一のジアステレオマーであった。D-トレオニンから誘導した触媒を用いると目的物は得られず、この反応では一段階目に形成された不斉点が二段階目の反応性に関与していることが示唆された。また、環状のジヒドロキシアセトン誘導体を用い、プロリン触媒存在下でアルドール反応を行うと、アンチ選択的に反応が進行した。この場合、一段階目に形成された不斉点は二段階目の反応性には影響せず、用いるプロリンの立体配置によって生成物を作りわけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは異なるが、2種類のキラルアミン触媒を用いたエナミン経由の反応を連続的に行い、有用化合物の立体選択的合成を行った。まず、過酸化ベンゾイルを求電子剤に用いてアルデヒドのα位をエナンチオ選択的にベンゾイルオキシ化し、続いて水酸基を保護したジヒドロキシアセトンとアルドール反応を行うと、3ヵ所の不斉点が制御された単一のジアステレオマーの糖誘導体が合成できることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に開発した反応系を用いて、複数の単糖類の立体選択的合成を試みる。また、アミン触媒によるエナミン経由の反応で用いる求電子剤や、アミン触媒以外の触媒とのハイブリッド触媒系を種々検討し、反応系の拡張を図る。
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