研究課題
核呼吸因子-1 nuclear respiratory factor-1(NRF-1)の機能解析を目的に、これまでコンディショナルノックアウトマウスの構築に着手してきた。令和元年度は相同組換えES細胞をマウス初期胚にマイクロインジェクションし、数匹のキメラマウスの取得に成功した。令和2年度はライン化したfloxマウスと当研究室で維持している各臓器特異的Cre発現マウスを交配し、全身および各臓器特異的なNRF-1ノックアウトマウスの機能解析を行う予定である。また、令和元年度はNRF-1応答性レポーター遺伝子の安定発現細胞を用いたNRF-1活性評価系の構築を目的に検討を行ってきたが、内部標準遺伝子の発現が高くなりすぎてしまうなど、安定発現株の選別の過程でいくつかの問題点が見つかった。そこで当初の予定を一部変更し、一過性発現の系でNRF-1活性評価系の構築を行った。当研究室で所有するHigh Content Screening 装置で活性を定量的に測定するために、レポーター遺伝子の導入条件や神経モデル細胞の培養条件を最適化した。その結果、NRF-1活性変動を感度良くかつ大規模に評価可能な系を構築することができた。令和2年度は本評価系を用いて様々な種類の化学物質におけるNRF-1阻害作用のポテンシャルを評価する予定である。さらに令和元年度はNRF-1の新規下流遺伝子として同定しているUBE2D1遺伝子のプロモーター解析を行った。具体的には長さの異なるUBE2D1プロモーターを組み込んだレポータープラスミドを十数種類作製し、レポーターアッセイを行ったところ各レポータープラスミドでNRF-1に対する応答性が異なることが明らかとなった。この結果よりUBE2D1プロモーター上のNRF-1結合領域を絞り込むことに成功した。
2: おおむね順調に進展している
化学物質のNRF-1阻害作用のポテンシャルを評価するためのスクリーニング系の構築に成功したため。また、NRF-1コンディショナルノックアウトマウス解析のためのキメラマウスを取得したため。さらにNRF-1の新規下流遺伝子として同定したUBE2D1遺伝子のプロモーター解析を行い、NRF-1結合領域を絞り込むことに成功したため。
令和2年度は、これまでに構築したNRF-1活性評価系と当研究室で所有するHigh Content Screening 装置を組み合わせ、各種の化学物質のNRF-1阻害作用を網羅的に解析する。得られた情報から用量反応曲線を作製し、作用の強さを比較することで化学構造や物性とNRF-1阻害作用の相関関係を明らかにする。また、ライン化したNRF-1 floxマウスと当研究室で維持している各臓器特異的Cre発現マウスを交配し、全身および各臓器特異的なNRF-1ノックアウトマウスを解析することで、臓器特異的なNRF-1の機能を明らかにする。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
Journal of Hazardous Materials
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